10月12日の物語
「第4の壁を壊すのは好きか?」
がくしの何気ない問いかけから、この日のラウンジでは、舞台の世界と現実の境界について語り合うことになった。
集まったのは、かりん、せいと、がくし、くぼりおと、馴染みのある友人たち。
出演作品や近況の話をしているうちに、話題は演劇の演出へと広がっていった。
登場人物が観客に直接語りかけることは、作品をより面白くするのか。
それとも、物語への没入を妨げてしまうのか。
演じる側と観る側、それぞれの経験から意見が飛び交い、ひとつの答えには収まらない会話が続いた。
そんな真剣な話のあとは、せいとがずっと遊びたがっていた「犯人は踊る」。
かりんも友人たちも快く参加してくれて、せいとは嬉しそうに笑っていた。
ところが、いざ始めてみると犯人として勝つのがなかなか難しい。
がくしはアリバイの使い道に悩み、くぼりおは探偵として次々と犯人を見つけていく。
せいととかりんもあと一歩で逃げ切れそうなのに、最後には見つかってしまう。
悔しがる声も笑い声に変わり、何度も勝負を楽しんだ。
続いて、かりんの友人が「このボドゲ、世界で一番好きで。
おすすめです」と取り出したのは「ゲシェンク+」。
数字のカードと黒いチップだけで始まる、思いがけず奥深い心理戦。
攻めるか、守るか。
自分の判断を信じるか、相手の出方を待つか。
みんなが頭を悩ませる中、最後は自然体で流れに乗ったりおが勝利した。
「これ面白いね!!!!」
初めてのゲームに、みんなから賞賛の声が上がった。
舞台の第4の壁について話していたはずが、気づけばゲームの中で犯人を疑い、相手の心を読もうとしている。
この夜はずっと、誰かの考えを知ることを楽しんでいたのかもしれない。
そして、友人が大切にしていたゲームが、またひとつラウンジのみんなのお気に入りになりそうだった。
第4の壁を壊すべきか、その答えは出なかったけれど、ここでは誰かが「一緒にやろう」と声をかけるだけで、知らなかった楽しさとの境界がなくなっていく。
そんな新しい楽しみを分け合いながら、馴染みの顔ぶれと過ごす夜は、いつもより少し豊かに感じられた。
