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日々の物語
5月29日の物語
雨上がりのようなやわらかい空気が、ラウンジに流れていた。 「初めましての人もいるし、もっとみんなのこと知りたいな」 りのが棚から取り出したのは、『佐藤です。好きなおにぎりの具は梅です。』というゲームだった。 お題に答え、その答えを今度はみんなで当てる。たったそれだけなのに、不思議と人柄が滲み出る。 好きなもの。苦手なもの。思いがけないこだわり。 一巡終わる頃には、「そんな一面あったんだ」と笑い声が増えていた。 「もう一回やりたい!」 友人の一言で二巡目が始まる。 今度はエピソードトーク禁止。 けれど食べ物のお題が出るたび、誰かが少しだけ語りたそうな顔をしてしまう。結局は雑談へ脱線していき、ゲームと会話の境界は曖昧になっていった。 その後、れみーが「何か演じられるゲームないかな」と棚を探し始める。 りのが見つけたのは『笑ってはいけない音読』だった。 議員風に。 お坊さんのように。 けんじが淡々と演じるほど面白くなり、みんな耐えきれず吹き出してしまう。 「人間五割、犬五割」 その文字を見ただけで笑い始めるりの。 間髪入れずに、れみーが「ワン!」と吠え
5月28日の物語
ラウンジに降りてきたみやびとなつとすぎちゃんは、最初に少しだけ背筋を伸ばした。 床には、たいがが置いていたチラシが散乱している。 けれど、その場には誰もいない。 普段は閉まっているラウンジのドアも少しだけ開いていた。 「……不審者?」 誰かがそう呟いた瞬間、その説が妙に有力になってしまう。 三人は護身用として、殺陣練習用の刀をそれぞれ手元に置き始めた。 友人が遊びに来る気配がすると、すぐに刀を持って入口へ向かう。 「何者だ……?」 真顔で問いかける三人。 もちろん現れたのはいつもの友人たちで、むしろ迎えられた側の方が驚いていた。 そんなふうに始まった夜は、どこかおかしな緊張感をまといながらも、いつも通り穏やかだった。 談笑したり、音楽の話をしたりしている最中、ふいに友人の一人が声を上げた。 「床、濡れてる!」 みんなで集まって確認すると、確かに柱の近くに小さな水たまりができている。 「なんで?」 痕跡をたどるように視線を上げていくと、水は柱を伝い、天井付近へ続いていた。 その先には空調設備。 すると、建築関係の仕事をしている友人が静かに言った。.
5月26日の物語
火曜日のラウンジには、いつもの笑い声があった。 でもその奥に、少しだけ“終わり”の気配が混ざっていた。 この日、えさっしーはこのシェアハウスを旅立つ。 だからまずは、えさっしーのやりたいことを全部やろう、という話になった。 机の上には、次々とボードゲームが広がっていく。 最初に始まったのは『答えを合わせましょうゲーム』。 価値観を揃える、シンプルだけど妙に盛り上がるゲームだった。 「好きなおにぎりは?」 「かっこいい都道府県は?」 「韓国料理といえば?」 みんなが答えを書いていく。 えさっしーの答えは、どこか“王道っぽいのに少しズレている”のが絶妙だった。 しゃけ。 京都。 チャプチェ。 「え、そこチャプチェなんだ!?」 笑いと驚きが同時に起きる。 合わせるゲームなのに、えさっしーらしさだけはどんどん際立っていった。 しばらくして、えさっしーの友人が頼んでくれたピザが届く。 箱を開けた瞬間、ラウンジに広がる匂い。 「うわ、最高だ」 誰かがそう言って、みんなが笑う。 ポテトも、チキンも、熱いうちに手を伸ばして、机の上は一気に賑やかになった。...
5月25日の物語
明日、えさっしーがこのシェアハウスを出ていく。 その事実が、ラウンジの空気に静かに混ざっていた。 「手紙、書こうか」 うめしゅーがそう言って、机の上に紙を並べる。 けんじも、せいとも、友人たちも、それぞれペンを持った。 何を書こう。 どの思い出を書こう。 ふざけていた時間ばかり思い出せるのに、いざ文字にしようとすると少し難しい。 そんな中、うめしゅーが元々書いていた手紙を「読んでみて」と渡された。 せいとは、その文章を読み進めるうちに、静かに膝から崩れ落ちていた。 笑い合ったこと。 芝居のこと。 一緒にいた時間。 まっすぐな言葉ばかりだった。 寂しいはずなのに、不思議と空気は前向きだった。 手紙を書いている途中、けんじがぽつりと言う。 「俺、えさっしーさんと一回しか会ったことないんですよね」 すると、うめしゅーが間髪入れずに笑った。 「なら、捏造しよう!」 そこから始まったのが、“手紙エクステンドエチュード”だった。 架空の思い出を交えながら手紙を読み上げ、気になった部分があれば周りが「○○エクステンド!」と叫ぶ。 すると話している人は、そのエピ
5月23日の物語
ラウンジでは、誰かが刀を持つと、自然と人が集まってくる。 この日も、そんな空気から始まった。 けんじとくぼりおが向かい合い、ゆっくりと距離を測る。 刀が交わる音が、静かなラウンジに小さく響いた。 「ここ、もう少し引きつけてから斬ると映えるかも」 過去にそれぞれが立ってきたアクション現場の話をしながら、二人は少しずつ立ち回りを組み立てていく。 その横では、せいととさのちゃんが、現場で覚えた抜刀と納刀を披露していた。 抜く速さだけじゃない。 鞘に戻すまでの“間”や、“見せ方”まで含めて殺陣なんだと分かる。 「日本殺陣って、型が綺麗なんだよね」 「でもエンタメ殺陣は魅せ方が派手で好き」 そんな話をしているうちに、気づけばみんなが輪になっていた。 誰かが技を見せれば、「おぉ」と声が上がる。 うまくいかなくても、笑いながら何度も試してみる。 やがて、けんじが部屋からヌンチャクを持ってくる。 それだけで空気が少し変わる。 するすると回るヌンチャクに、友人たちの視線が集まった。 「やってみたい!」 そこから、即席のヌンチャク練習会が始まる。 最初はみんな恐る恐
5月22日の物語
脚本リレーWEEK、最終日。 四日間かけて繋がれてきた物語が、ようやく一つの形になる夜だった。 ラウンジでは、なつが「新しいゲーム増えてるからやってみたいんだよね」と箱を抱えてきていた。 『ぽいよね』ゲーム。 机に並べられた絵柄カードを見ながら、親が「この絵柄はこの人っぽい」と理由をこじつけ、名前を書いて伏せていく。 他のプレイヤーたちは、その“ぽさ”を読み解きながら答えを当てるゲームだった。 最初の親は、はるき。 みんなのことを眺めながら、一枚ずつカードを置いていく。 結果、正解したのは“フランスパン=なつ”だけだった。 「え、なんで!?」 「いや、これは分かるって」 はるきが理由を説明すると、みんなが妙に納得してしまう。 その人の雰囲気とか、喋り方とか、笑い方とか。 一緒に過ごしているうちに見えてくる“なんとなく”が、ちゃんと形になっていた。 親を交代しながら続けていくうちに、少しずつ全員の考え方が読めるようになっていく。 れみーが親になった最終戦では、 「これはいける!」 と、全員が勝利を確信していた。 けれど最後の一枚で選択を間違える。
5月21日の物語
脚本WEEK、ついに4日目。 りの、なつ、すぎ、そして遊びに来てくれた友人たちは、まずこれまでに書き上げられた脚本を最初から読み返していた。 week1、week2で積み上げられてきた怖い体験談。 特に、みんなの記憶に強く残っていたのは“サイドミラー引っかかり婆”という、妙に語感だけ怖い存在だった。 けれど、week3に入ると空気が変わる。 男女で部屋割り。 混浴。 「すげぇラブコメじゃん」 「これ恋愛リアリティショー?」 「男子たちが書いた内容だなぁ!」 ページをめくるたび、猛烈なツッコミが飛ぶ。 それでも、ふざけているように見える展開の中に、ちゃんと伏線が散りばめられていた。 誰かが何気なく置いた違和感や、不自然な会話。 「これ回収できそうだね」 笑いながらも、少しずつ物語は再び“ホラー”へ戻されていった。 けれど、読み進めるうちに、登場人物たちの設定がまだ薄いことにも気づく。 「性格だけじゃなくて、もっと核になるもの欲しいよね」 そこからは、まるで推理会議だった。 「男1と男2、人喰いにする?」 「女2は女1のこと好きとか?」 「主人公、男
5月20日の物語
この夜のラウンジは、いつもの男子ノリとは少し違っていた。 机の上には開かれたパソコン。 途中まで書かれたホラー脚本。 そして、なぜかずっと進まない作業。 脚本リレーweek三日目。 “転”を担当するのは、いっちー、まさき、たいがたちだった。 ここまで繋がれてきた起承を読み返しながら、 「これどう転がす?」 「どういう結末にする?」 と、全員で頭を悩ませる。 そんな中、いっちーの友人がぽつりと言った。 「これ、この女の子にとって恋愛チャンスじゃない?」 その一言で、物語の空気が変わる。 ホラーだったはずの脚本に、急に“人間らしい感情”が入り込んだ。 そこから、いっちーが言う。 「ヒューマンホラーにしたいね」 その瞬間、みんなの中で方向性が決まった。 人間の感情がじわじわあふれ出す。 話し合うたび、登場人物たちの輪郭が少しずつ濃くなっていく。 ……はずだった。 気づけば誰かが別のゲームを持ち出していた。 その日見つけたのは、『HITSTER』。 流れてきた曲を聞き、タイトルやアーティスト、そして“年代”を当てるゲームだった。 懐かしいイントロが流れる
5月19日の物語
この日のラウンジには、怪談話にしては少し明るすぎる笑い声が響いていた。 発端は、れみーがぽつりと話し始めた“最近あった怖い話”だった。 舞台は京都。 内容自体は、ちゃんと怖い。 話が進むにつれて、えさっしーはすかさず怪談らしいBGMを流し始める。 空気だけは完璧だった。 けれど、どうしても怖くなりきらない。 れみーの話し方なのか、それとも元々持っている明るさなのか。 「いや、本当に怖かったんだって!」 本人は真剣なのに、どこか話の終着点が“生還エンド”の安心感に包まれている。 えさっしーは完全にツボに入ってしまったらしく、何度も吹き出していた。 みずきちと友人たちも、その様子を見ながら笑っている。 最後にれみーが、 「でも、生きててよかったー!って思った!」 と締めくくると、ラウンジは怪談話のあととは思えないほど穏やかな空気になっていた。 その夜は、“脚本リレーweek”の二日目でもあった。 テーブルにはパソコン。 そして途中まで書かれたホラー脚本。 昨日、いっちー、うめしゅー、せいとが繋いだ“起”を、 今度は“承”へ進めていく番だった。...
5月18日の物語
その日のラウンジには、どこか“頭が起ききっていない午後”みたいな空気が流れていた。 うめしゅーも、いっちーも、なんだか脳みそが回っていない。 「今日はもう難しいこと無理かも……」 そんな空気の中で始まったのが、『ザ・ゲーム』だった。 勝ち負けを争うゲームではない。 全員で協力して、ただ“クリア”を目指すゲーム。 最初は、全然うまくいかなかった。 カードを出すタイミングも噛み合わず、 「いや今それ!?」 「待って待って!」 と、みんな頭を抱える。 けれど、少しずつ空気が変わっていく。 誰かが困っていそうなら待つ。 今この人が何を考えているか想像する。 自分が出したいカードより、みんなの流れを優先する。 そんな小さな思いやりが積み重なっていった。 気づけば、あと数枚。 「いけるかも」 という空気が、卓を囲む全員の間に生まれていた。 そして、ギリギリのところでクリア。 「うわぁぁぁ!!」 「やった!!」 歓声と拍手が同時に起きる。 順位も優劣もないのに、 全員で一つのゴールへ向かって喜ぶ時間は、不思議なくらい温かかった。 夜が深まると、ラウンジでは新し
5月17日の物語
夕方のラウンジに、突然「ハッピーセット食べたくない?」という声が響いた。 発端はいっちーだった。 どうやら今のハッピーセットには、“マクドナルドロボ”のおもちゃが付いてくるらしい。 しかも、いっちーが欲しいのはナゲット型のロボ。 その話を聞いた瞬間、 「え、欲しい」 「ちょっと気になる」 と、次々みんなが乗っかっていく。 気づけば、住民も友人も巻き込んだハッピーセット大会が始まっていた。 中でも、かりんの友人は勢いが違った。 「じゃあ、俺三つ頼むわ」 その一言に、ラウンジがざわつく。 机の上に並んだハッピーセットは、全部で七つ。 紙袋とポテトとナゲットが広がる光景は、なんだか妙に高揚感があった。 開封の瞬間は、ちょっとした運試しだった。 いっちーが欲しがっていたナゲットロボは、まさかのかりんの手元へ。 「なんでぇぇぇ!!」 笑い声が上がる。 一方で、りのだけは最後まで、 「ちいかわが良かった……」 と静かに呟いていた。 ポテトをつまみ、ナゲットを分け合いながら、ラウンジはすっかり“マックパーティー”になっていた。 その様子を見ながら、かりんの友人
5月16日の物語
ラウンジには、作業の音が静かに流れていた。 キーボードを叩く音。 動画を書き出す待機音。 誰かが時折こぼす笑い声。 その中心で、せいとは誕生日会動画の最終調整をしていた。 恒例になりつつある、誕生日動画。 映像の中では、笑っている人たちがいて、誰かの「おめでとう」が重なっていく。 当日ラウンジにいた友人たちにも、完成しかけの動画を見せる。 映像が終わると、自然と拍手が起きた。 5月誕生日のかりんは、少し照れくさそうにしながら、それでも本当に嬉しそうだった。 「早く上がらないかなぁ」 そう呟いた顔が、動画の中の笑顔と少し似ていた。 そのあと、かりんが突然オセロを持ち出した。 「くぼりお、勝負しよ!」 完全に勢いだった。 けれど、対戦相手に選ばれたくぼりおは、オセロにあまり慣れていなかったらしい。 「え、どこ置けばいいのー!?」 盤面を前に頭を抱える。 黒と白が少しずつ広がっていくたび、かりんは得意げになっていった。 結果は、かりんの勝利。 そこで終われば良かったのに、調子に乗ったかりんは次にみずきちへ挑戦状を叩きつける。 けれど、みずきちは強かった
5月15日の物語
その日のラウンジは、どこか“放課後”みたいな空気だった。 みずきちが、仕事でゲームマーケットに携わるという話をしていて、そこから自然と「せっかくだし、ボードゲームやろうよ」という流れになる。 最初に選ばれたのは、『インサイダー』。 箱だけは見たことがある。 でも、ちゃんと遊ぶのは全員ほぼ初めてだった。 ルールを確認しながら、探り探りゲームが始まる。 「生きてますか?」 「食べられますか?」 「見たことありますか?」 「値段、高いですか?」 「物理的に高いですか?」 「東中野にありますか?」 質問が飛ぶたび、みんな少しずつ真剣な顔になっていく。 答えはまだ霧の中だったのに、突然、れみーが顔を上げた。 「わかった! 電信柱だ!」 その瞬間、ラウンジが止まる。 「え、なんで!?!?」 「急すぎるって!」 あまりに鮮やかな正解に、全員が“れみーこそインサイダーなのでは”と疑い始める。 けれど、本当のインサイダーはみずきちだった。 本人ですら、予想外の速さに驚いていたらしい。 「そんな角度から来る!?」と、思わず笑っていた。 ひとつゲームを終える頃には、み
5月14日の物語
ラウンジには、音楽の前の静かな雑談がよく似合う。 その日は、住民たちのニックネームの話から始まった。 雅が「ここでは“みやび”だけど、舞台では“みやびさま”とか“みやさま”って呼ばれることが多い」と話すと、 「みやさま、なんか良いね」 と友人たちが笑う。 れみーは、少し照れながら、 「昔、“レモンちゃん”って呼ばれてたことある。レモン好きだから」 と打ち明けた。 そこから自然に、好きな食べ物の話へと流れていく。 豆腐。 トマト。 チャーハン。 パフェ。 たったそれだけの話なのに、好きなものを語る声には、その人らしさがちゃんと滲む。 すぎちゃんが「セロリ好きなんだよね」と言った時には、雅が「セロリにピーナッツバターつけると美味しいよ」と教えていた。 「えぇ!?」 と驚く声。 けれど、誰かが一度“やってみたいかも”と言った瞬間、その場に小さな肯定が広がる。 そういう空気が、このラウンジにはよく似合っていた。 やがて話題は音楽へ移る。 相対音感を持つれみーを羨ましそうに見ながら、雅が言った。 「せっかくだし、みんなでハモりたい!」 その一言に、すぎちゃ
5月13日の物語
その日は、ラウンジにたくさんの人が来ていた。 いつもの顔も、初めましての顔もある。 けれど、不思議と卓を囲んでしまえば境界は薄くなっていく。 誰かの芝居の話から、学生時代の話になり、また別の誰かが好きな作品について語り出す。 役者としての顔と、素のままの顔。 そのどちらも隠さずに笑っている住民たちを見て友人たちも自然と会話へ混ざっていった。 席はばらばらだったのに、笑い声だけは、いつも同じ場所から広がっていた。 その流れで始まったのが、「エイゴダーケ」。 日本語を使わず、英語だけでお題を説明するゲーム。 さのちゃんとせいとが友人たちの輪へ入り、 「like a〜!」 「near!!」 「very big!!」 知っている単語を必死に繋ぎ合わせていく。 けれど途中から、誰からともなく身振り手振りが混ざり始める。 もう半分くらいジェスチャーゲームだった。 それでも答えが伝わるたび、 「あーー!!それか!!」 と大きな声が上がる。 ゲームのルールは少し崩れていたけれど、楽しさだけは綺麗に成立していた。 いっちーは、その様子を少し離れたところから眺めてい
5月12日の物語
なつが書いていた交換ノートを、えさっしーが興味深そうに覗き込んでいた。 「なんか、絵描きたくなってきた」 その一言から、自然とお絵描き大会が始まった。 お題はどんどん奇妙になっていく。 「クッパ」 「忘れられかけのビスコ」 「30年後の阿部寛」 「15:30のお父さん(インパーク)」 「球場でビールの売り子をする木村拓哉」 誰かが描くたび、机の周りに人が集まる。 「分かる〜!」 「そこにこだわるんだ!」 絵の上手さというより、“解釈”が面白かった。 同じお題なのに、描く人によってまるで別物になる。 えさっしーは、ずっと描きたがっていたぶん、特に満足そうだった。 紙を覗き込みながら、終始にこにこしている。 その流れのまま、今度は“価値観合わせお絵描き”が始まる。 テーマはディズニーリゾート。 「定番フードといえば?」 五人中四人が、迷いなくチュロスを描いた。 しかも全員、ちゃんとミッキー型だった。 さすがというか、なんというか。 ディズニー好きたちの感覚は、自然と揃っている。 けれど、「パーク内でよく見かけるキャラクターは?」というお題だけは違った
5月11日の物語
「昔、やり残したことってある?」 うめしゅーがそう言ったところから、その日のエチュードは始まった。 ただの即興劇ではない。 過去にできなかったことを、“今”やり直してみるための時間だった。 最初にせいとが話したのは、小学生の頃の後悔。 好きだった相手に、結局気持ちを伝えられなかったこと。 友人たちも役に入り、教室の空気が少しずつ作られていく。 懐かしい距離感。 言えそうで言えない沈黙。 せいとは、何度か言葉を探すように息を詰まらせながら、それでも最後にはちゃんと気持ちを口にした。 返ってきた優しい言葉を聞いた瞬間、その“生徒”の目が潤んでいた。 きっと、あの頃には出来なかった終わり方だった。 次はいっちー。 小学生の頃、本当はお腹が痛かったのに、保健室の先生へ言い出せなくて無理をしてしまい、子どもながらにしんどかったという話をしてくれた。 同級生役をうめしゅーと友人が、先生役をせいとが演じる。 「なんでもないです」って言ってしまいそうになる空気。 でも、今度はいっちーはちゃんと口にした。 「お腹、痛いです」 それだけの言葉なのに、言い終わった後の
5月10日の物語
音楽が流れると、人は少しだけ別のものになれる。 その日、れみーとかりんといっちーとさのちゃんは、流れてくる曲に合わせて刀を振っていた。 軽い遊びのはずなのに、不思議とみんな真剣だ。 「こういうBGMだと、こういうバトルだよね」 「ここ、切なく斬るわ」 曲調ひとつで、目の前に浮かぶ景色が変わる。 戦う理由も、背負う物語も、自然と変わっていく。 「音楽ってイメージに直結するよね」 誰かがそう言うと、みんな納得したように頷いた。 その流れの中で、さのちゃんが突然、 「鬼の王に俺はなる!」 と高らかに宣言する。 すぐさま「斬られる側じゃんね」と返され、その小ボケは綺麗に一刀両断された。 少し笑って、また刀を振る。 そんな時間のあと、今度はさのちゃんといっちーが突然ペンを握り始めた。 「なんでも描けるから」 自信たっぷりに言う二人へ、友人たちがお題を投げていく。 描き上がるたび、ラウンジには妙な悲鳴と歓声が混ざった声が響いた。 確かに元のお題に似ている。 けれど、どこか決定的に違う。 似て非なる生き物たちが、机の上に次々と誕生していく。 「これは何……?」
5月9日の物語
「京都人狼って知ってる?」 友人が取り出したそのゲームは、“よそもん”に対して、“すなおな京都人”と“いけずな京都人”が褒め言葉を投げかけるという、不思議な人狼ゲームだった。 ただ褒めるだけではない。 “いけず”は、言葉の裏に別の意味を忍ばせる。 やわらかい口調の奥に、うっすら棘を混ぜ込む。 京都出身のせいとは、どこか余裕のある顔をしていた。 誰が“いけず”なのかを見抜くのも早く、得意げな表情を隠しきれていなかった。 りのは最初、どうしても優しさが滲み出てしまう。 けれど回を重ねるうちに、少しずつ“含み”を覚えていく。 かりんも驚くほど自然で、「もう京都行けるよ」と友人たちに笑われていた。 ただ言葉を並べるだけじゃない。 何を隠して、何を滲ませるか。 「これ、演技にも応用できそうだよね」 そんな話をしている三人を、友人たちは感心したように眺めていた。 その後、今度は音楽ゲーム『HITSTER』が始まる。 QRコードを読み込むと、突然流れ出すイントロ。 曲名、アーティスト名、発売年を当てながら、年代順にカードを並べていく。 「あーー!知ってる!」
5月8日の物語
「誕生日動画には、やっぱり曲が欲しいよね」 せいとのその一言から、誕生日動画用の曲作りが始まった。 ただ作るだけでは面白くない、と誰かが言い出して、みんなでそれぞれ一曲ずつ考えて発表する流れになる。 真面目なものもあれば、妙に耳に残るものもある。 笑いながら聴き比べて、投票して、最終的に選ばれたのは、かりん作の「〆のラメン」だった。 タイトルだけ聞いたらおかしいのに、妙に完成度が高い。 頭から離れない。 「これ、もう振り付け欲しくない?」 自然とそんな空気になっていく。 かりんが中心になって、「〆のラメン♪」のフレーズに合わせたコミカルな振付を作り始めた。 ささみとれみーも並んで踊る。 手拍子を送る友人たち。 笑いながらも、三人は案外しっかり踊り切る。 誕生日限定アイドル《フーディズ》。 ふざけているはずなのに、踊り終えた瞬間には、ちゃんと拍手が起こっていた。 曲作りをしているうちに、今度は誰かが自然と合いの手を入れ始める。 「ここ、ミックス入れられる!」 元アイドルオタクのりのが火をつけるように盛り上がり、気づけばラウンジはライブ会場みたいにな
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