5月10日の物語
- 5月11日
- 読了時間: 2分
音楽が流れると、人は少しだけ別のものになれる。
その日、れみーとかりんといっちーとさのちゃんは、流れてくる曲に合わせて刀を振っていた。
軽い遊びのはずなのに、不思議とみんな真剣だ。
「こういうBGMだと、こういうバトルだよね」
「ここ、切なく斬るわ」
曲調ひとつで、目の前に浮かぶ景色が変わる。
戦う理由も、背負う物語も、自然と変わっていく。
「音楽ってイメージに直結するよね」
誰かがそう言うと、みんな納得したように頷いた。
その流れの中で、さのちゃんが突然、
「鬼の王に俺はなる!」
と高らかに宣言する。
すぐさま「斬られる側じゃんね」と返され、その小ボケは綺麗に一刀両断された。
少し笑って、また刀を振る。
そんな時間のあと、今度はさのちゃんといっちーが突然ペンを握り始めた。
「なんでも描けるから」
自信たっぷりに言う二人へ、友人たちがお題を投げていく。
描き上がるたび、ラウンジには妙な悲鳴と歓声が混ざった声が響いた。
確かに元のお題に似ている。
けれど、どこか決定的に違う。
似て非なる生き物たちが、机の上に次々と誕生していく。
「これは何……?」
「いや、でも惜しい!」
笑い疲れる頃、誰かがぽつりと言った。
「音楽の日だし、みんなで歌う?」
そこからは、思いつくまま曲を流していく時間だった。
ディズニーソング。
J-POP。
知っているところだけを、なんとなく口ずさむ。
そんな中、かりんが『WINDING ROAD』を流した。
「ハモリといえば、これだよね」
やってみると、意外とサビしか覚えていない。
それでも、なんとなく重ねてみる。
誰もが主旋律よりハモりをやりたがるのが、おかしかった。
最後にはカメラを立てて、本当に撮影まで始まる。
けれど途中から、いっちーとさのちゃんがふざけ始める。
真面目に歌いたい人と、どうしても笑わせたい人。
その温度差のまま完成した動画は、妙にシュールで、でも楽しそうだった。
さらに、かりんが『JANE DOE』を流したことで、空気はまた変わる。
「レゼダンス踊れる?」
誰も踊れなかったはずなのに、れみーとかりんは、数分後にはもう形にしていた。
覚えて、合わせて、最後にはTikTokまで撮ってしまう。
刀を振って、
絵を描いて、
歌って、
踊る。
「今日、盛りだくさんすぎるねぇ」
そう笑い合う声が、夜のラウンジにやわらかく残っていた。
同じ音楽で笑って、
同じ空気の中で遊ぶ。
そんな小さな積み重ねだけで、その日は充分、明るかった。
