5月26日の物語
火曜日のラウンジには、いつもの笑い声があった。
でもその奥に、少しだけ“終わり”の気配が混ざっていた。
この日、えさっしーはこのシェアハウスを旅立つ。
だからまずは、えさっしーのやりたいことを全部やろう、という話になった。
机の上には、次々とボードゲームが広がっていく。
最初に始まったのは『答えを合わせましょうゲーム』。
価値観を揃える、シンプルだけど妙に盛り上がるゲームだった。
「好きなおにぎりは?」
「かっこいい都道府県は?」
「韓国料理といえば?」
みんなが答えを書いていく。
えさっしーの答えは、どこか“王道っぽいのに少しズレている”のが絶妙だった。
しゃけ。
京都。
チャプチェ。
「え、そこチャプチェなんだ!?」
笑いと驚きが同時に起きる。
合わせるゲームなのに、えさっしーらしさだけはどんどん際立っていった。
しばらくして、えさっしーの友人が頼んでくれたピザが届く。
箱を開けた瞬間、ラウンジに広がる匂い。
「うわ、最高だ」
誰かがそう言って、みんなが笑う。
ポテトも、チキンも、熱いうちに手を伸ばして、机の上は一気に賑やかになった。
えさっしーは、ほとんど一ホール分くらい食べていた。
「うまい!」
本当に満足そうな顔だった。
その顔を見ながら、みんなもなんだか嬉しくなる。
食べながら、自然と思い出話が始まった。
あの日のゲーム。
変な発言。
笑いすぎて息ができなかった夜。
誰の話の中にも、えさっしーはちゃんといた。
しかも、全部少し楽しそうに記憶されている。
「そんなことあったね」
「いや、あれマジで意味わかんなかった」
笑いながら話しているうちに、時間はあっという間に過ぎていった。
最後に、えさっしーがみんなへ向けて書いた手紙を読む時間があった。
静かに読み上げられる言葉を聞きながら、それぞれがこの場所で過ごした時間を思い返していた。
寂しい。
きっとみんなそう思っている。
でも、それだけじゃなかった。
見送る側も、見送られる側も、どこか前を向いていた。
「ここは、いつだってみんなの居場所だから」
「いつでも戻っておいで!」
その言葉に、えさっしーが笑う。
涙もあった。
寂しさも、ちゃんとあった。
それでも最後まで、ラウンジにはえさっしーらしい、あたたかな空気が流れていた。
