5月25日の物語
- 4 日前
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明日、えさっしーがこのシェアハウスを出ていく。
その事実が、ラウンジの空気に静かに混ざっていた。
「手紙、書こうか」
うめしゅーがそう言って、机の上に紙を並べる。
けんじも、せいとも、友人たちも、それぞれペンを持った。
何を書こう。
どの思い出を書こう。
ふざけていた時間ばかり思い出せるのに、いざ文字にしようとすると少し難しい。
そんな中、うめしゅーが元々書いていた手紙を「読んでみて」と渡された。
せいとは、その文章を読み進めるうちに、静かに膝から崩れ落ちていた。
笑い合ったこと。
芝居のこと。
一緒にいた時間。
まっすぐな言葉ばかりだった。
寂しいはずなのに、不思議と空気は前向きだった。
手紙を書いている途中、けんじがぽつりと言う。
「俺、えさっしーさんと一回しか会ったことないんですよね」
すると、うめしゅーが間髪入れずに笑った。
「なら、捏造しよう!」
そこから始まったのが、“手紙エクステンドエチュード”だった。
架空の思い出を交えながら手紙を読み上げ、気になった部分があれば周りが「○○エクステンド!」と叫ぶ。
すると話している人は、そのエピソードをさらに深掘りしていかなければならない。
事実と嘘の境界線が、少しずつ曖昧になっていく。
「その時どう思ったの?」
「え、そこ詳しく聞きたい」
うめしゅーも、せいとも、友人たちも、順番に挑戦していく。
最初、けんじはなかなかうまく話せなかった。
すると、うめしゅーが言う。
「全部作ろうとしないで、事実ベースにするとやりやすいよ」
そこから、なぜか“けんじの初恋”の話になった。
「あ、それエクステンド!」
「待って、その後どうなったの!?」
気づけば、みんな身を乗り出している。
稽古のはずなのに、完全に恋バナだった。
初恋の甘酸っぱさ。
あの頃の勘違い。
言えなかった言葉。
誰かの話を聞きながら、自分の昔まで思い出してしまう。
ラウンジ全体が、少しだけ青春の色になっていた。
その日遊びに来ていた、うめしゅーの役者仲間も、途中から自然と輪の中に混ざって笑っていた。
世間話から始まって、気づけば稽古になっている。
でも、稽古の中にちゃんと日常が混ざっている。
この場所らしい夜だった。
