5月9日の物語
- 5月9日
- 読了時間: 2分
「京都人狼って知ってる?」
友人が取り出したそのゲームは、“よそもん”に対して、“すなおな京都人”と“いけずな京都人”が褒め言葉を投げかけるという、不思議な人狼ゲームだった。
ただ褒めるだけではない。
“いけず”は、言葉の裏に別の意味を忍ばせる。
やわらかい口調の奥に、うっすら棘を混ぜ込む。
京都出身のせいとは、どこか余裕のある顔をしていた。
誰が“いけず”なのかを見抜くのも早く、得意げな表情を隠しきれていなかった。
りのは最初、どうしても優しさが滲み出てしまう。
けれど回を重ねるうちに、少しずつ“含み”を覚えていく。
かりんも驚くほど自然で、「もう京都行けるよ」と友人たちに笑われていた。
ただ言葉を並べるだけじゃない。
何を隠して、何を滲ませるか。
「これ、演技にも応用できそうだよね」
そんな話をしている三人を、友人たちは感心したように眺めていた。
その後、今度は音楽ゲーム『HITSTER』が始まる。
QRコードを読み込むと、突然流れ出すイントロ。
曲名、アーティスト名、発売年を当てながら、年代順にカードを並べていく。
「あーー!知ってる!」
「懐かしすぎる!」
ラウンジの空気が、一気に学生時代みたいになる。
懐メロも、最近の流行り曲も、洋楽も入り混じる。
正解することより、思い出すことの方が楽しかった。
誰かが歌えば、自然と合唱になる。
ゲームはとっくに終わっているのに、誰も止めようとしない。
深夜のカラオケみたいな、少しだけ時間を忘れる空気が流れていた。
夜の終わりには、「じゃれ本」を囲む。
前の人の百五十文字だけを頼りに、次の物語を書き足していくリレー小説。
せいとの物語は、“アレ”と“ソレ”だけで進み始め、気づけば誰も予測できない方向へ転がっていった。
りのの物語は、童話のような静かな始まりだったのに、いつの間にか自分自身との戦いになり、最後には神になっていた。
そんな中、かりんの『世界最後の日の世界会議』だけは、不思議なくらい綺麗にまとまった。
「すご…」
読み終わった瞬間、自然と歓声が漏れる。
完成した物語を順番に読み上げていく時間は、ずっと笑いが絶えなかった。
無理やり繋いだ文章も、
意味の分からない展開も、
誰かの想像力の続きだった。
その日は、一日中ずっと笑っていた気がする。
遊ぶことに本気な大人たちの輪の中で、
言葉も、歌も、物語も、
全部が少しずつ混ざり合っていた。
