5月17日の物語
夕方のラウンジに、突然「ハッピーセット食べたくない?」という声が響いた。
発端はいっちーだった。
どうやら今のハッピーセットには、“マクドナルドロボ”のおもちゃが付いてくるらしい。
しかも、いっちーが欲しいのはナゲット型のロボ。
その話を聞いた瞬間、
「え、欲しい」
「ちょっと気になる」
と、次々みんなが乗っかっていく。
気づけば、住民も友人も巻き込んだハッピーセット大会が始まっていた。
中でも、かりんの友人は勢いが違った。
「じゃあ、俺三つ頼むわ」
その一言に、ラウンジがざわつく。
机の上に並んだハッピーセットは、全部で七つ。
紙袋とポテトとナゲットが広がる光景は、なんだか妙に高揚感があった。
開封の瞬間は、ちょっとした運試しだった。
いっちーが欲しがっていたナゲットロボは、まさかのかりんの手元へ。
「なんでぇぇぇ!!」
笑い声が上がる。
一方で、りのだけは最後まで、
「ちいかわが良かった……」
と静かに呟いていた。
ポテトをつまみ、ナゲットを分け合いながら、ラウンジはすっかり“マックパーティー”になっていた。
その様子を見ながら、かりんの友人が嬉しそうに笑う。
「まじ高校生みたいなことしてる笑」
「やっぱり、ここのラウンジは違うなぁ」
食べ終わったあとは、お絵描き大会が始まる。
お題は、初音ミク。
かりんは重ね塗りを丁寧に重ねながら、完成度の高い一枚を描き上げていく。
ささみは配色が綺麗で、見た瞬間に空気感が伝わるような絵だった。
りののミクは、どこか愛嬌があって、見ているだけで少し笑顔になる。
そして、いっちー。
途中までは確かにミクだったはずなのに、完成した頃には、もう何か別の物になっていた。
「大事なのは自由な心だから」
本人は堂々としていたが、周りは誰一人理解できていなかった。
さらにその流れで始まったのが、“3分ドローイングチャレンジ”。
制限時間は三分。
お題はAIが決める。
「傘を持って強風に耐える人」
「丸まって眠る狐」
「体をくねらせる蛇の魔物」
「羽根を広げるカラス」
「割れた仮面」
「大きく手を振るアイドル」
短い時間なのに、描き上がる絵は全部違う。
上手さだけじゃなく、
“その人がどう見ているか”が、そのまま線に出ていた。
可愛い方向へ行く人。
不気味に寄せる人。
なぜかギャグにしてしまう人。
描いている間は集中して静かなのに、
「それ何!?」
「え、発想すご!」
と会話はずっと途切れない。
同じお題を見ているはずなのに、誰ひとり同じ絵にはならなかった。
その違いが、なんだか少し嬉しい夜だった。
