5月18日の物語
- 5月20日
- 読了時間: 2分
その日のラウンジには、どこか“頭が起ききっていない午後”みたいな空気が流れていた。
うめしゅーも、いっちーも、なんだか脳みそが回っていない。
「今日はもう難しいこと無理かも……」
そんな空気の中で始まったのが、『ザ・ゲーム』だった。
勝ち負けを争うゲームではない。
全員で協力して、ただ“クリア”を目指すゲーム。
最初は、全然うまくいかなかった。
カードを出すタイミングも噛み合わず、
「いや今それ!?」
「待って待って!」
と、みんな頭を抱える。
けれど、少しずつ空気が変わっていく。
誰かが困っていそうなら待つ。
今この人が何を考えているか想像する。
自分が出したいカードより、みんなの流れを優先する。
そんな小さな思いやりが積み重なっていった。
気づけば、あと数枚。
「いけるかも」
という空気が、卓を囲む全員の間に生まれていた。
そして、ギリギリのところでクリア。
「うわぁぁぁ!!」
「やった!!」
歓声と拍手が同時に起きる。
順位も優劣もないのに、
全員で一つのゴールへ向かって喜ぶ時間は、不思議なくらい温かかった。
夜が深まると、ラウンジでは新しい企画が始まった。
“脚本リレーウィーク”。
月曜から木曜まで、その日にいるメンバーで少しずつ脚本を書き、
金曜日には朗読劇として完成させる。
今回のテーマは、“ホラー”。
まずは、みんなの怖い体験を持ち寄るところから始まった。
金縛り。
夜中に見た影。
兄弟だけが見えていた“何か”。
話しているうちに、ラウンジの空気が少しずつ静かになっていく。
うめしゅーは、最初こそ少しほっこりする怪談を話していた。
けれど後半になるにつれて、空気の温度が変わるような、本当に怖い話を語り始める。
誰も口を挟まずに聞いていた、その時だった。
話が終わったタイミングで、いっちーがぽつりと言った。
「僕、小さい頃、二時になると“お父さんおかえり”って言う子だったんですよね」
一瞬、空気が止まる。
「……え?」
笑うでもなく、驚くでもなく、
ただ全員が静かにその言葉を受け止めていた。
せいとは、その話を聞きながら、しっかりメモを取っていた。
怖い話として終わらせるのではなく、どう脚本に落とし込むかを考えている顔だった。
ラウンジの真ん中で、少しずつ物語の輪郭が出来ていく。
まだ結末は誰も知らない。
けれど、その“これから何になるんだろう”という感覚が、
なんだか少し楽しそうだった。
