5月12日の物語
- 5月12日
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なつが書いていた交換ノートを、えさっしーが興味深そうに覗き込んでいた。
「なんか、絵描きたくなってきた」
その一言から、自然とお絵描き大会が始まった。
お題はどんどん奇妙になっていく。
「クッパ」
「忘れられかけのビスコ」
「30年後の阿部寛」
「15:30のお父さん(インパーク)」
「球場でビールの売り子をする木村拓哉」
誰かが描くたび、机の周りに人が集まる。
「分かる〜!」
「そこにこだわるんだ!」
絵の上手さというより、“解釈”が面白かった。
同じお題なのに、描く人によってまるで別物になる。
えさっしーは、ずっと描きたがっていたぶん、特に満足そうだった。
紙を覗き込みながら、終始にこにこしている。
その流れのまま、今度は“価値観合わせお絵描き”が始まる。
テーマはディズニーリゾート。
「定番フードといえば?」
五人中四人が、迷いなくチュロスを描いた。
しかも全員、ちゃんとミッキー型だった。
さすがというか、なんというか。
ディズニー好きたちの感覚は、自然と揃っている。
けれど、「パーク内でよく見かけるキャラクターは?」というお題だけは違った。
ささみの友人が描いた何かが、どう見てもゴーストバスターズだったのだ。
「いや、何それ!」
ラウンジに笑い声が広がる。
本人は真面目に描いていたらしいのが、余計におかしかった。
その後、なつが交換ノートの相談を始める。
舞台『人魚の夏』で小学生役をやるらしく、座組で交換ノートを回しているという。
まず書いた自己紹介。
“もりもとなつみ”という名前の横には、なぜか少し不穏なタッチの絵。
「怖い怖い!」
えさっしーの友人たちが慌てて、
「花とか海とか足そうよ!」
と提案する。
そこからは、みんなで交換ノート作りになっていった。
「子どもの頃よく食べてた駄菓子は?」
「ディズニーで好きなフードは?」
さっきまでのお絵描き大会の流れも混ざりながら、質問がどんどん増えていく。
色とりどりのペンで埋まっていくページは、
にぎやかで、少し不器用で、でもちゃんと楽しそうだった。
ラウンジにいたのは、いつもの顔ぶれ。
だからこそ、誰かが絵を描けば自然と覗き込み、
誰かが悩めば、みんなで続きを考える。
特別なことをしているわけじゃない。
でも、その“いつも通り”のあたたかさが、
その日は特に心地よかった。
