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5月19日の物語

  • 5月20日
  • 読了時間: 3分

この日のラウンジには、怪談話にしては少し明るすぎる笑い声が響いていた。


発端は、れみーがぽつりと話し始めた“最近あった怖い話”だった。


舞台は京都。

内容自体は、ちゃんと怖い。


話が進むにつれて、えさっしーはすかさず怪談らしいBGMを流し始める。


空気だけは完璧だった。


けれど、どうしても怖くなりきらない。


れみーの話し方なのか、それとも元々持っている明るさなのか。


「いや、本当に怖かったんだって!」


本人は真剣なのに、どこか話の終着点が“生還エンド”の安心感に包まれている。


えさっしーは完全にツボに入ってしまったらしく、何度も吹き出していた。


みずきちと友人たちも、その様子を見ながら笑っている。


最後にれみーが、

「でも、生きててよかったー!って思った!」

と締めくくると、ラウンジは怪談話のあととは思えないほど穏やかな空気になっていた。


その夜は、“脚本リレーweek”の二日目でもあった。


テーブルにはパソコン。

そして途中まで書かれたホラー脚本。


昨日、いっちー、うめしゅー、せいとが繋いだ“起”を、

今度は“承”へ進めていく番だった。


みずきち、れみー、えさっしーの三人が画面を覗き込む。


そこには、妙に不穏な単語が並んでいた。


“濡れおじ”

“サイドミラー引っかかりババア”


「何これ……都市伝説?」


誰かが笑いながら呟く。


物語の続きを考えながら、

「この役、あの人がやりそう」

「あの人なら絶対こう喋る」

と、自然と住民や友人たちの顔が浮かんでくる。


怪しい花の名前を検索したり、さっきまで聞いていたれみーの怪談話を脚本へ混ぜ込もうとしたり。


笑いながらなのに、少しずつ物語はちゃんと“怖い方”へ進んでいった。


そして、

“この先どうなるんだろう”

というところで、みずきちはキーボードを打つ手を止める。


続きは、また次の誰かへ。


物語のバトンだけが、静かに机の上へ置かれた。


その頃、別の卓では、えさっしーが友人たちを集めて“ひらがじゃん大会”を開いていた。


完成した単語を、脚本へ採用するらしい。


真剣勝負の末、勝ったのはえさっしーの友人。


並んだ単語の中に、

「ぬーど」

という文字があった。


「これ脚本に入れようよ!」


えさっしーは妙に乗り気だったが、

みずきちとれみーに即却下されていた。


ラウンジでは、脚本を書いている人もいれば、

ゲームをしている人もいる。


ご飯を食べながら話を聞いている人もいた。


それぞれ好きなことをしているのに、

不思議と空気はひとつだった。


笑い声の絶えないホラー脚本制作。


そんな夜があっても、きっといい。

 
 

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