5月8日の物語
- 5月9日
- 読了時間: 2分
「誕生日動画には、やっぱり曲が欲しいよね」
せいとのその一言から、誕生日動画用の曲作りが始まった。
ただ作るだけでは面白くない、と誰かが言い出して、みんなでそれぞれ一曲ずつ考えて発表する流れになる。
真面目なものもあれば、妙に耳に残るものもある。
笑いながら聴き比べて、投票して、最終的に選ばれたのは、かりん作の「〆のラメン」だった。
タイトルだけ聞いたらおかしいのに、妙に完成度が高い。
頭から離れない。
「これ、もう振り付け欲しくない?」
自然とそんな空気になっていく。
かりんが中心になって、「〆のラメン♪」のフレーズに合わせたコミカルな振付を作り始めた。
ささみとれみーも並んで踊る。
手拍子を送る友人たち。
笑いながらも、三人は案外しっかり踊り切る。
誕生日限定アイドル《フーディズ》。
ふざけているはずなのに、踊り終えた瞬間には、ちゃんと拍手が起こっていた。
曲作りをしているうちに、今度は誰かが自然と合いの手を入れ始める。
「ここ、ミックス入れられる!」
元アイドルオタクのりのが火をつけるように盛り上がり、気づけばラウンジはライブ会場みたいになっていた。
「パン、パン、パン、パン、ささみパン!」
「フレッシュブレッド、レモンパン!」
「いちかりん〜! いちかりん〜!」
「ともだち春のパンまつり!」
もはや何を応援しているのか分からない。
でも、全員が本気だった。
主役の三人に向かって、そのオリジナルミックスを全力で叫ぶ動画まで撮影する。
くだらないのに、全力。
全力なのに、どこか愛おしい。
ラウンジには、ずっと笑い声が残っていた。
その日は、小さな誕生日会でもあった。
プレゼントを抱えて来る友人。
お菓子を持ち寄る友人。
誰かを祝おうとする気持ちが、自然と同じ場所へ集まっていく。
笑いながら歌って、
踊って、
ふざけて、
でもその全部の奥に、
「おめでとう」がちゃんとあった。
