top of page

5月13日の物語

5月13日
読了時間: 2分

その日は、ラウンジにたくさんの人が来ていた。


いつもの顔も、初めましての顔もある。

けれど、不思議と卓を囲んでしまえば境界は薄くなっていく。


誰かの芝居の話から、学生時代の話になり、また別の誰かが好きな作品について語り出す。


役者としての顔と、素のままの顔。

そのどちらも隠さずに笑っている住民たちを見て友人たちも自然と会話へ混ざっていった。


席はばらばらだったのに、笑い声だけは、いつも同じ場所から広がっていた。


その流れで始まったのが、「エイゴダーケ」。


日本語を使わず、英語だけでお題を説明するゲーム。


さのちゃんとせいとが友人たちの輪へ入り、

「like a〜!」

「near!!」

「very big!!」


知っている単語を必死に繋ぎ合わせていく。


けれど途中から、誰からともなく身振り手振りが混ざり始める。

もう半分くらいジェスチャーゲームだった。


それでも答えが伝わるたび、

「あーー!!それか!!」

と大きな声が上がる。


ゲームのルールは少し崩れていたけれど、楽しさだけは綺麗に成立していた。


いっちーは、その様子を少し離れたところから眺めていた。


何を説明しているのか、途中から全然分からない。

でも、みんなが笑っているから、なんだかそれで良かったらしい。

ぽけっとした顔のまま、一緒に笑っていた。


夜が深くなる頃、せいとがホワイトボードを持ち出した。


「ともだち’n-chiのマスコット作ろうや」


そこから始まった、謎のマスコットキャラクター選手権。


最初は“ちゃんと可愛いもの”を描こうとしていたはずなのに、

「選ばれたい」という欲が出始めたあたりから、様子がおかしくなっていく。


いっちーのキャラクターは妙に完成度が高く、さのちゃんのキャラクターは、もはや生態系のどこに属しているのか分からない。


せいとは途中で戦線離脱し、審査員側へ逃げた。


最後には、その二体の“何か”を並べ、友人たちへ真顔で問いかける。


「どっちと一緒に住める?」


ラウンジは笑い声でいっぱいになった。


投票の結果、勝ったのはいっちー。

本当にわずかな差だった。


文字通り、タッチの差。


その日ラウンジには、いくつものグループがいた。

けれど帰る頃には、最初から同じ輪の中にいたみたいに話していた。


誰かが笑えば、別の誰かも笑う。


そんな小さな連鎖が、夜のラウンジをやわらかく繋いでいた。

 
 

最新記事

すべて表示
9月16日の物語

雨のせいか、この日のラウンジにはいつもよりゆっくりとした時間が流れていた。 それでも、誰かの隣には自然と誰かがいて、話し声が静かに途切れることはなかった。 ゲームにも少し飽きてきた頃、まさき、たいが、いっちーの三人はダーツを始めることに。 最初こそ点数を数えていたものの、次第に面倒になり、なぜか「最初にブルへ入れた人が負け」という男気ダーツが始まった。 真剣にブルを狙いながら「入るな!」と叫ぶ、矛

 
 
9月15日の物語

この日のラウンジは、みずきち、がくし、はるきと、遊びに来た友人たちでゆったりと始まった。 大勢で囲むような賑やかさとは少し違う。 それでも、誰かが何かを始めれば、自然とみんなの視線がそこへ集まり、気づけば笑い声が重なっている。 そんな近い距離感の夜だった。 始まりは、がくしが一昨日行われた「メロい先輩選手権」を振り返ったことから。 「そもそも、メロさとは何か」 答えを探すべく、みずきちとはるきに“

 
 
9月14日の物語

久しぶりに顔を見せてくれた友人も多く、この日のラウンジはあちこちで話が弾んでいた。 そんな中、りのと友人たちが始めたのは、おじさん構文を作るゲーム。 手札を組み合わせるたびに、絶妙に嫌な距離感のメッセージが次々と誕生する。 読み上げるたびに悲鳴が上がり、それ以上の笑い声が返ってきた。 やがて「最高の文を考えよう!」と、勝ち負けそっちのけで全員の知恵を集め始める。 そして完成したのが、 「オジサンサ

 
 
bottom of page