10月13日の物語
「すごーい!やりたい!」
けいちゃんの弾くギターを見て、マキの目が輝いた。
この日のラウンジでは、そんな何気ない一言から、小さな挑戦が次々と始まっていった。
集まったのは、けいちゃん、マキ、みずきちと、顔馴染みの友人たち。
みずきちは自分が主催する舞台の話、マキは出演作品の話、けいちゃんは好きなアニメの話。
それぞれ違う話題で盛り上がりながらも、誰かの話に耳を傾けたり、ふと会話に加わったり。
同じ場所にいるだけで落ち着ける、そんな穏やかな時間が流れていた。
そんな中、けいちゃんのギターに興味を持ったマキが、弾き方を教わることに。
まずは持ち方から。
そして、いきなり難関のFコードに挑戦したものの、思うように指が動かず、思わずうめき声が漏れる。
けいちゃんもみずきちも友人たちも、そんなマキをあたたかく見守っていた。
続いてCとGを教わると、マキはみんながおしゃべりしている間も黙々と練習。
少しずつ音が形になり、最後にはけいちゃんから「いい響きだね」と褒めてもらえた。
その姿に刺激を受けたのは、みずきちだった。
「ギターはFコードで挫折しちゃったけど、ピアノならいけるかも!」
そう言って今度はピアノのコード譜と向き合い始める。
挑戦するのは、スピッツの「チェリー」や「ジャンボリミッキー」。
聞こえてくるのは、言われてみれば確かにその曲かもしれない、という絶妙な演奏。
それでも少しずつ曲らしくなっていく音に、自然と笑顔がこぼれた。
いつかマキのギターと、みずきちのピアノを合わせられたら。
そんな楽しみまで生まれていた。
この日は、誰かが頑張っている隣で、別の誰かが好きなことを話していた。
上手にできなくても笑い合えて、少しできるようになれば一緒に喜んでくれる。
まだぎこちないギターとピアノの音も、いつか二人で奏でる曲の始まりになるのかもしれない。
その日を楽しみにできることが、なんだか嬉しかった。
それぞれの好きなことが、少しずつ誰かの「やってみたい」に変わっていく。
そんなあたたかな音が、いつまでもラウンジに残っているような夜だった。
