10月21日の物語
「絶対にのらない!」
水曜日のラウンジで、いっちーは誰よりも強い意志を見せていた。
この日、友人たちとはるきがテーマパークの話で盛り上がっていた。
絶叫マシンの話題になると、いっちーは自分がいかに苦手かを熱弁。
どうやら、この場で乗れないのはいっちーだけらしい。
苦手なのは、あのふわっと身体が浮く感覚。
視界が遮られていれば平気な場合もあるという、なんとも微妙な境界線だった。
みんなは克服できるようにと応援するものの、本人の決意は固い。
乗らない宣言を重ねるいっちーに、笑い声が広がった。
一方、ラウンジでは脚本ウィーク三日目の「転」も進んでいた。
一昨日の「起」、昨日の「承」を受け取り、今日は物語を大きく動かす日。
いつも水曜日の脚本に頭を抱えていたせいとが、今回は自らふざけた方向へ転がそうとする。
「それでいいのか」と止めていたいっちーだったが、次第に二人で物語を膨らまし始めた。
そして後半、はるきが真剣に物語と向き合い、広がった話を丁寧に本筋へと戻していく。
思い切り脱線する人がいて、それを面白がる人がいて、最後にちゃんと物語へ繋ぎ直す人がいる。
三人の違う発想が重なり、脚本は完成へと近づいていった。
友人たちもそれぞれの会話に花を咲かせながら、明日の結末を楽しみにしていた。
考えてみれば、ジェットコースターが苦手ないっちーも、脚本の中では予想外の急展開に飛び込んでいた。
現実の絶叫マシンには絶対に乗らないけれど、物語なら、どこへ転がるかわからない面白さを楽しめる。
そんな違いも、なんだかいっちーらしかった。
明日は、いよいよ「結」。
三日間かけてみんなが繋いできた物語が、どんな場所にたどり着くのか。
期待を残しながら、水曜日のラウンジは賑やかに更けていった。
