10月2日の物語
大きな音とともに風船が割れ、せいとの魂がどこかへ飛んでいった。
翌日に控えたみやびの誕生日会に向けて、この日のラウンジではみんなで飾り付け。
いくつも風船を膨らませている最中、せいとの持っていたひとつが突然破裂した。
あまりの音に、せいとは放心状態。
すると、かりんが静かに唱え始める。
「マブヤー、マブヤー、うーてぃくよー」
沖縄に伝わる、驚いて抜け落ちた魂を身体へ戻すための呪文らしい。
思いがけないところで、住民と友人たちは今後使えそうな新たな呪文をひとつ覚えた。
飾り付けがひと段落すると、かりんの友人が「せいとが好きそう」と持ってきたボードゲーム「Coup」で遊ぶことに。
ルール説明中、かりんとすずみーの頭にはずっと「?」が浮かんでいたものの、始めてみれば少しずつ仕組みが分かり、ダウトを交えた駆け引きに夢中になっていく。
一方、頭を使うゲームが得意なせいとは早々にルールを理解。
しかしカード運には恵まれず、次第に狂人のような動きを繰り返し、あっという間に敗退した。
風船を膨らませて、突然の音に驚いて、知らなかった呪文を覚えて、ゲームで笑う。
気心の知れた人たちと過ごしていると、そんな何でもない時間まで、どこか放課後のように感じられた。
そして、みんなで膨らませた風船は、明日ここへ来る誰かを祝うためのものだった。
今日の笑い声の続きに、明日はきっと「おめでとう」が重なっていく。
そんな次の日を楽しみにしながら、誕生日の前夜はゆっくりと過ぎていった。
