10月7日の物語
「みんなでできるね!」
たいがの嬉しそうな声が、まさかこのあとラウンジ中の悲鳴に変わるとは、誰も思っていなかった。
この日も、はるき、たいが、いっちーのもとに友人たちが集まり、賑やかな夜が始まった。
まず盛り上がっていたのは、いっちーが見つけたスマホのポケモンバトル。
たいがや友人たちも参戦し、目が合えばすぐ勝負を仕掛けるいっちーだったが、自信満々で挑んだ初戦からまさかの敗北。
悔しさのあまり勝つまでやると言い張り、友人たちも苦笑いしながら何度も付き合ってくれた。
ようやく勝利を手にしたいっちーは、見たこともないポーズで得意げな顔。
その姿に、またみんなが笑った。
そんな中、いっちーの友人が那須高原で訪れた歴史資料館の話を始める。
横井庄一さんが長年潜んでいた穴蔵を見てきたという話から、たいがとの名前の繋がりが話題になり、いつしかそれぞれの祖先の話へ。
はるきも
「そういえば、僕の祖先は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出てたよ!
國村隼さんが演じてた大庭景親って人」
と明かし、みんなを驚かせた。
自分もいつか歴史に名を残せる人になれたら。
そんなことを、はるきはふと思っていた。
そして、たいががUFOキャッチャーで手に入れた電気イスゲームが登場する。
パッケージには十二個のイス。
「みんなでできるね!」と期待して開けてみれば、中身はまさかの一個だけ。
説明書を読んでも、複数人で遊ぶには同じ商品がいくつも必要らしい。
がっかりしたのも束の間、それは恐怖のビリビリマシーンへと姿を変えた。
誰かが電気に驚くたび、悲鳴と笑い声がラウンジに響き渡った。
ポケモンで勝ち誇ったり、遠い昔の祖先に思いを馳せたり、電気に飛び上がったり。
話題はあちこちに飛んでいったけれど、どこを見ても楽しそうな顔があった。
いつか歴史に名前が残るような大きな出来事があったとしても、きっと今日のような夜は記録には残らない。
それでも、誰かの得意げな顔や、思わず上がった悲鳴を思い出して笑える日が、いつか来るのかもしれない。
そんな小さな思い出をまたひとつ増やして、ラウンジの夜は賑やかに更けていった。
