1月13日の物語
- 1月14日
- 読了時間: 2分
更新日:1月14日
ラウンジでは、えさっしーの友人たちが、お揃いのスウェットで集まっていて、パジャマパーティーみたいな柔らかい空気が満ちていた。
お揃いの色が並ぶだけで、ここは急に“よその家”じゃなくなる。
はるき、せいと、まさき、えさっしーも、その空気に引っ張られて、言葉の角が自然に丸くなっていく。
今夜の主役は、1月に入居したばかりの住民、えさっしー。
得意のジャグリングを披露しようとすると、せいとが最近買ったばかりのカメラを構える。
その後ろに、さっとまさきが座って、監督のスイッチが入った。
「落としたら何か言ってください。オチがつくまでカットしません。」
訴えかけるようなえさっしーの「えっ」は、まさきの真剣な表情にすっと飲み込まれた。
ボールが落ちるたび、無音が伸びる。
誰かが笑いそうになるのをこらえて、息を吸い直す。
その呼吸さえ、撮影の一部みたいに整っていく。
落ちる音と、拾う手の動きと、もう一度投げ上げる決意。
繰り返すほどに、上手くなるというより、みんなが同じリズムを待つようになる。
それでも最後には、まさきの編集で30秒のショート動画がちゃんと“作品”になった。
たった30秒の中に、あの長い無音も、こらえた笑いも、全部折りたたまれている気がして、拍手が少しあたたかかった。
ひと息ついた頃、うめしゅーへの誕生日寄せ書きアルバムが回り出す。
ペン先のさらさらが混ざると、ラウンジの時間が急にやわらかくなる。
えさっしーがメッセージを読み上げた。
「いつもトンカツ情報ありがとう」
なのに全員が「いつも婚活情報ありがとう」と聞き間違えて、場が一瞬で騒然。
笑いながら訂正して、笑いながら納得して、結局また笑う。
聞き間違いひとつで、みんなの距離が、ぐっと近づくのが不思議だった。
そして気がつくと、住民全員がジャグリングのボールを持っていた。
誰かが投げれば、誰かが真似をして、落ちても拾う手がすぐ伸びる。
みんな覚えが早くて、基本の3ボールカスケード習得まであと少し。
ヨーヨーブームの次は、ジャグリング——
そんな予感が、ボールの弧と一緒に天井近くをふわりと回っていた。
帰り際、スウェットの袖がこすれる音と、転がりそうなボールを慌てて受け止める手の動きが、妙にやさしく見えた。
上手くいくまでの無音も、聞き間違いの騒然も、全部まとめて今日の思い出になる。
きっと明日も、何かを投げ上げたくなる。
ラウンジには、落とさないためじゃなく、また始めるための余韻が、小さく残っていた。
