top of page

1月16日の物語

1月17日
読了時間: 2分

ラウンジには、まだこの前のうめしゅーバースデーの飾りつけの名残が残っていた。


しぼんだ風船や、少し曲がった文字。

片づけきれないものが、なぜか“続いてる”感じを作ってくれる。

終わったはずの祝いが、部屋の隅でまだ呼吸しているみたいだった。


まさきは「みんなの特技を伸ばそう」と言って、動画の構成を考えはじめる。

りのとくぼりおも入って、勢いのままダンス。

足がテーブルにぶつかって、「痛っ」と笑いが起きて、失敗まで素材になる。

まさきの指はものすごい速さで動いて、転んだ瞬間や笑った顔が、気づけば“ちゃんと良い”シーンに変わっていく。

今日もまた、今日だけの一本が生まれた。


編集が進むあいだ、りのは次回出演作品のアクションを、くぼりおと一緒に分析しながら練習した。

角度、間合い、視線の置き方。

さっきまでのふざけた動きとは別の集中が、同じ部屋の中にすっと立ち上がる。

ラウンジって、不思議だ。

笑いの隣に、真剣さをそっと置ける。


そこへ、うめしゅーが帰ってくる。

うめしゅーと誕生日が一日違いのくぼりお——ふたりが揃った瞬間、そこにいたみんなが理由もなくそわそわし始める。

目が合うたびに、言葉にならない合図が増えていく。

誰かがクラッカーを探し、誰かが歌い出すタイミングを息で測る。

ラウンジの空気が、少しだけ甘くなる。


そして、何度目かのバースデーソング。

クラッカーの乾いた音。

驚いた顔と、照れた顔が重なって、飾りつけの名残が意味を持つ。

笑いながら拍手して、拍手しながらまた笑って、祝われる側も祝う側も、境目が薄くなっていく。


住民の数だけお祝いがある——それが、このシェアハウスらしさだと思った。

誕生日は一日だけのはずなのに、ここでは何度でも続いていい。

しぼんだ風船さえ、今夜の続きを知っているみたいに、静かに揺れていた。

 
 

最新記事

すべて表示
9月16日の物語

雨のせいか、この日のラウンジにはいつもよりゆっくりとした時間が流れていた。 それでも、誰かの隣には自然と誰かがいて、話し声が静かに途切れることはなかった。 ゲームにも少し飽きてきた頃、まさき、たいが、いっちーの三人はダーツを始めることに。 最初こそ点数を数えていたものの、次第に面倒になり、なぜか「最初にブルへ入れた人が負け」という男気ダーツが始まった。 真剣にブルを狙いながら「入るな!」と叫ぶ、矛

 
 
9月15日の物語

この日のラウンジは、みずきち、がくし、はるきと、遊びに来た友人たちでゆったりと始まった。 大勢で囲むような賑やかさとは少し違う。 それでも、誰かが何かを始めれば、自然とみんなの視線がそこへ集まり、気づけば笑い声が重なっている。 そんな近い距離感の夜だった。 始まりは、がくしが一昨日行われた「メロい先輩選手権」を振り返ったことから。 「そもそも、メロさとは何か」 答えを探すべく、みずきちとはるきに“

 
 
9月14日の物語

久しぶりに顔を見せてくれた友人も多く、この日のラウンジはあちこちで話が弾んでいた。 そんな中、りのと友人たちが始めたのは、おじさん構文を作るゲーム。 手札を組み合わせるたびに、絶妙に嫌な距離感のメッセージが次々と誕生する。 読み上げるたびに悲鳴が上がり、それ以上の笑い声が返ってきた。 やがて「最高の文を考えよう!」と、勝ち負けそっちのけで全員の知恵を集め始める。 そして完成したのが、 「オジサンサ

 
 
bottom of page