1月21日の物語
- 1月22日
- 読了時間: 2分
ラウンジは終始賑やかで、友だち同士ももう顔見知りだった。
グループで集まって、笑い声が重なるたび、寒さが薄れていく。
いっちー、たいが、せいとに、それぞれの友人たち。
ここにいるだけで、何かが始まりそうな夜だった。
「ヤクザ物のオーディション、事前対策しよう」
せいとの一言で、急遽はじまる“ヤクザ劇場”。
ラウンジにいる友だちから設定をもらって、台本をその場で組み立てる。
完成した一本目は、まさかの『ヤクザ×恋愛物』。
意中の相手に告白するせいとの口から落ちてきた。
「恋ってさ、抗争より怖ぇな」
その瞬間だけ、ラウンジが「深い…」で静かに揺れた。
けれど、どうにもヤクザ物とは言いがたくて、真剣な顔のまま笑いが漏れる。
演じ終わったせいとが、たまらず言った。
「やりたかった物と違う!!」
そこで二本目。
今度こそ、と決まったのは『ヤクザ×対立』。
三人のヤクザが方向性の違いで、今後どうするかを話し合う——はずだった。
けれど、その場のみんなが想像していた通り、途中から会話の温度がいつもの住民たちのそれになっていく。
言葉遣いだけが物騒で、空気はやけに優しい。
対立のはずが、結局、仲直りの手前みたいな落ち着きに着地してしまう。
ラウンジは笑いに包まれ、なぜか達成感だけはきちんと残った。
最後にラウンジに残ったのは、「みんな芝居が好き」という想いだった。
ヤクザになりきれなくてもいい。
むしろ、なりきれないまま最後までやり切れる場所があることが、少しあたたかい。
帰り際まで消えない笑いの余韻が、カーテンコールの拍手のようにそっとみんなを称えた。
