1月22日の物語
- 1月23日
- 読了時間: 2分
木曜のラウンジは、少しだけゆっくり息をしていた。
はるき、せいと、りの、みずきち。
そこに友人たちが加わって、誰かが話していない時間も、ちゃんと居心地がいい。
自由にしていていい、という安心が、部屋のあちこちに置かれていた。
最初に始まったのは、誕生日アルバムづくり。
みんなで描いた絵をデコレーションしていく。
正解がないぶん、どれもちゃんと“その人らしい”。
はるきの友人は、誕生日の人との架空の思い出を書き始めて、読まれるたびに笑いが起きた。
その世界線では、なぜか誕生日の人は宇宙飛行士で、重力の軽さみたいに、場の空気もふわっと浮いた。
次は、りのが持ってきた台本をみんなで読む時間。
せいとの友人も一緒になって、役が回っていく。
せいとは「役作りには、9つの障害が大事なんだよ」と教えてくれて、同じ台詞でも、やる人が変わるたびに空気ががらっと変わる。
新鮮で、少し照れくさくて、でも面白い。
中にひとつ、叫び続ける役があって、その番になると、みんな一段と気合が入る。
声を出すたび、ペットボトルの水が減っていって、別の役のときより明らかに消費量が多いのが可笑しかった。
遊んでいる時間と真剣な時間が、共存しているのがこのラウンジらしい。
後半は、「みんなを知ろう」の時間。
友だちのひとりが、「厳しい私立だったから、遠足のおやつを買いに駄菓子屋に行ったことがない」と話したのをきっかけに、受験の話になり、役者になるきっかけの話に流れていく。
もしも、はるきがあのオーディションに進んでいたら――
もしも、せいとが違う高校を選んでいたら――
もしも、みずきちが夢を諦めて別の仕事を続けていたら――
そんな“別の世界線”の話をしながら、今ここに一緒にいることが、静かに奇跡みたいに思えてくる。
誰も大げさなことは言わないけれど、同じ気持ちが、同じ速さで胸に落ちていった。
帰る時間になっても、すぐには誰も動かない。
コートを着たまま立って、もう一話だけ、と話が続く。
名残惜しさも含めて、この場所のあたたかさだった。
ラウンジは、特別なことをしなくても、ちゃんと愛おしい。そんな夜だった。
