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1月5日の物語(番外編)

  • 1月5日
  • 読了時間: 2分

2026年、最初のラウンジ開放日。


うめしゅーは「友だちと書き初めでもしようかな」と思いながら、どんな言葉が似合うかを胸の中で転がして、階段を降りてきた。

扉を開けた瞬間、空気がすっと頬を撫でて、本音がこぼれる。

「うわ、さむ」


ラウンジには管理人さんがいて、申し訳なさそうに肩をすくめた。

「エアコンがつかないんですよ。業者にも問い合わせたんだけど、年始ですぐには修理できないって…」


そのとき、帰省していたせいとが「ただいま〜」と入ってくる。

事情を聞くと、せいとはリモコンを押し、吹き出し口に手を当てて、風が戻る気配を探した。

戻らないとわかっても、もう一度だけ押してみる。

その感じが、なんだか優しかった。


騒ぎに気づいたはるきが、ポットを抱えてやって来る。

「温かいの配ろう。来たら、まずそれ渡せばいい」


直るかどうかより、みんなが“友だちを迎える準備”を諦めたくない顔をしていた。


けれど、日が沈むにつれて冷え込みは増していく。

管理人さんが静かに言った。

「こんなに寒かったら、友だちが来ても風邪ひいちゃうよな…。今日はラウンジの開放はなしにしよう」


その一言に、うめしゅーは一瞬だけ黙って下を向き、それから顔を上げた。

来れなかったみんなの顔が、きっと浮かんだのだと思う。

「せっかく予定空けてくれてたし、部屋で配信でもしよう」


ラウンジの代わりに、画面の向こうをラウンジにする。

寒いなら寒いで、笑える日にしてしまう。


うめしゅーがぽん、と明るさを足すみたいに言った。

「今年の抱負を、漢字一文字で決めよう」

せいとがすぐに身を乗り出す。

「いいですね!僕もう決めてます!」

はるきも笑って、頷いた。

「みんなが集まったところがラウンジだもんね」


三人は配信の準備を始めるために、ラウンジを後にする。

扉が閉まっても、さっきまで交わしていた言葉の温度だけが、部屋の隅に小さく残った。


集まれなかった友だちへ。

今日は入れなかった部屋の代わりに、みんなの“来る場所”が別の形で灯る。

エアコンは壊れても、迎える気持ちは壊れなかった。

読んでくれたあなたの手元にも、白い息みたいなあたたかさが、少し残りますように。

 
 

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