1月6日の物語
- 1月6日
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ラウンジは本当なら閉じている予定だった。
エアコンはまだ黙ったままで、息をすると白くなるような気がする寒さ。
でも今日は、まさきの友人が誕生日に来るという。
それだけで、予定は少しだけ書き換えられて、みんながブランケットや小さなヒーター、ホッカイロを抱えて集まった。
椅子も自然と近くなる。寒さのせいで距離が縮まって、いつもは別々の輪が、ひとつの大きい輪みたいに並んだ。
かりんの友人、ささみの友人も混ざって、話題はお正月の実家みたいにとりとめなく流れていく。
何を話していたかより、誰かの声が続いていることが安心だった。
まさきが、友人が来る前にこっそり練習していたスリットドラムをテーブルの上に運ぶ。
練習の跡が残る手つきで、「ハッピーバースデー」をそっと鳴らした。
音は派手じゃないのに、あたたかい。
小さなメロディが部屋の隙間風を縫って、みんなの頬を少しだけゆるめた。
そのまま「次、誕生日近いの誰だっけ」と計画が始まり、未来の誕生日の話で笑いが増える。
そこへ、ささみの友人が「温かいものをUberで頼もう」と言って、スープストックが届いた。
ふたを開けた湯気に全員の目が吸い寄せられて、夢中でスープを飲む。
指先も喉も、ゆっくりほどけていく。
暖房はつかないまま。
それでも、近い席と湯気と、誰かのために鳴らした音があれば、ラウンジはちゃんと開いていた。
帰り際、残ったあたたかさが、部屋の隅で小さく灯っている気がした。
