top of page

2月16日の物語

  • 2月17日
  • 読了時間: 2分

ラウンジには、笑い声が先にあった。

さのちゃんの面白い話で、せいと、けんじ、いっちーが盛り上がっているところへ、友人たちが続々とやってくる。


その手には、なぜか揃って傘。

いっちーとさのちゃんは顔を見合わせる。

「……今日、雨降るのか?」


ここ最近、空はずっと穏やかだった。

だからこそ、その予感はどこか現実味がなかった。

『洗濯物、干せないかも⋯』と不安がよぎり、友人に尋ねる。

「これから降るよ」


その言葉の通り、外ではしっかりと雨が降り出していた。

湿度のせいか、いっちーの前髪は見事に跳ね上がる。

天気も髪型も、今日は少し言うことを聞かないらしい。


ラウンジには次第に人が集まりだし、お菓子を囲んで談笑する人、ボードゲームで白熱する人、それぞれの楽しみ方が、同じ空間の中で同時進行していく。


そんな中、住民たちが見つけたのは、見知らぬ新作ボードゲーム。

ラウンジで人気の「そういうお前はどうなんだ」シリーズの最新作だ。


「これはやらねば」

自然と人が集まり、インプロ型の推理ゲームが始まった。

推奨人数ぴったりで、住人と友人が入り混じる。

配られた役は、なかなかに破天荒。

“性別が逆”“年齢が高齢”“双子で一人二役”――


設定だけで、すでに物語が転び始めている。

その破茶滅茶な役どころが、さらに破茶滅茶な推理を生む。

真剣にやっているはずなのに、どこかおかしい。

演じる側も、見守る側も、気づけばずっと笑っていた。


ちなみに、この夜の事件の犯人はさのちゃん。

凶器は【妖刀 瑠璃色孔雀丸】。

名前だけがやけに立派で、余計に可笑しい。

雨音の向こうで、笑い声が重なる夜だった。

それぞれが好きなことをしているのに、空気はちゃんとつながっている。


外はしとしとと濡れていたけれど、ラウンジの中は、今日もにぎやかだった。

 
 

最新記事

すべて表示
5月29日の物語

雨上がりのようなやわらかい空気が、ラウンジに流れていた。 「初めましての人もいるし、もっとみんなのこと知りたいな」 りのが棚から取り出したのは、『佐藤です。好きなおにぎりの具は梅です。』というゲームだった。 お題に答え、その答えを今度はみんなで当てる。たったそれだけなのに、不思議と人柄が滲み出る。 好きなもの。苦手なもの。思いがけないこだわり。 一巡終わる頃には、「そんな一面あったんだ」と笑い声が

 
 
5月28日の物語

ラウンジに降りてきたみやびとなつとすぎちゃんは、最初に少しだけ背筋を伸ばした。 床には、たいがが置いていたチラシが散乱している。 けれど、その場には誰もいない。 普段は閉まっているラウンジのドアも少しだけ開いていた。 「……不審者?」 誰かがそう呟いた瞬間、その説が妙に有力になってしまう。 三人は護身用として、殺陣練習用の刀をそれぞれ手元に置き始めた。 友人が遊びに来る気配がすると、すぐに刀を持っ

 
 
5月26日の物語

火曜日のラウンジには、いつもの笑い声があった。 でもその奥に、少しだけ“終わり”の気配が混ざっていた。 この日、えさっしーはこのシェアハウスを旅立つ。 だからまずは、えさっしーのやりたいことを全部やろう、という話になった。 机の上には、次々とボードゲームが広がっていく。 最初に始まったのは『答えを合わせましょうゲーム』。 価値観を揃える、シンプルだけど妙に盛り上がるゲームだった。 「好きなおにぎり

 
 
bottom of page