2月23日の物語
ラウンジに集まったのは、うめしゅー、はる、けんじ、せいと。
そこへそれぞれの友人たちが加わり、穏やかなざわめきが広がっていた。
うめしゅーが、静かに短冊を配る。
「友人が大怪我をしてさ。みんなでお見舞いの言葉を書いてほしい。」
その人を知っている人も、知らない人も、迷いなくペンを取った。
励ましの言葉。冗談まじりのメッセージ。
「早くまた一緒に笑おう」という未来の約束。
さながら、ギブスに落書きをする学生のように、短冊はあたたかい文字で埋まっていく。
その様子を見ながら、うめしゅーは少しだけ目を潤ませていた。
祈りは目に見えないけれど、確かにそこにあった。
ひと段落すると、はるとはるの友人がギターを手に取る。
静かに始まった弾き語り。
レミオロメンの「粉雪」がラウンジに響く。
「加湿器の湯気、雪みたいだね」
誰かのその一言で、景色が変わった。
白く立ちのぼる湯気が、ほんとうに雪のように見える。
音楽は、空間の温度まで変えてしまう。
その瞬間、みんなの目に同じ雪景色が映っていた。
やがて、友人側からふと声が上がる。
「お芝居が見たい。」
住人たちは、はっとする。今日はまだ芝居をしていない。
即興エチュードが始まる。
花粉症に苦しむせいとが花粉役。
人間役にけんじ。
免疫役にはる。
演出はうめしゅー。
花粉と仲良くしたいけんじを、「危険だから」と必死に止めるはる。
物語は大きく広がりそうで――思いのほか、あっさり終わる。
一瞬の静寂のあと、うめしゅーを中心に大反省会が開かれる。
「あそこ、もっと膨らませられたよね」
「花粉の動機が弱かったかも」
真剣な言葉が飛び交う。
けれど、その目は輝いていた。
うまくいったかどうかより、“芝居をした”という事実がうれしい。
自由に過ごしている夜のはずなのに、ちゃんと役者としてそこに立っていた。
祈りも、音楽も、即興も。
静かな優しさと、熱のこもった反省が同じ空間にある夜。
ラウンジには今日も、確かに“表現する人たち”の灯りがともっていた。
