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2月27日の物語

2月28日
読了時間: 3分

この日のラウンジは、 「やりたい」が一斉に芽吹いた日だった。


みやびが「歌を歌いたい!」

すぎちゃんが「英語と作曲を学びたい!」

りのが「脚本を学びたい!」

その声が重なって、自然とひとつの結論に辿り着く。


――じゃあ、架空のミュージカルを作ろう。


そうして、ラウンジは一夜限りの創作スタジオになった。

すぎちゃんとみやびは作曲班。

友人たちと一緒に使いたいワードを出し合い、箇条書きにしていく。


それをもとにChatGPTで歌詞を生成し、そこからが本番。

「ここ、もう少し削ろう」

「ロックよりクラシカルな方が合うよね」

「BPM落とした方が壮大かも」

推敲、修正、編曲。


友人から出た「新たな世界へいざゆかん」というワードに、全員が強くうなずき、歌詞へ採用。


英語を学びたいすぎちゃんの想いも込め、フレーズの一部に英語を織り交ぜる。

みんなの願いと挑戦が混ざり合った、 芯のある一曲が出来上がっていった。


一方、りのとまさきは脚本班。

まさき監修のもと、りのと友人たちがアイデアを重ねる。

キャラクター設定、セリフ、物語の軸。

革命へ向かう決意表明のワンシーンが形になっていく。


すぎちゃんの友人の一言、

「オークの姫が世間を知らなすぎる」

そこから物語はぐっと動き出す。

姫が他のキャラクターと触れ合い、成長していく物語へ。


さらに、りのの友人が提案した

「(プテラノドンの)翼もね!」

その一言が、物語に軽やかな色を足す。

そしてまさきが、驚くほどの集中力で脚本を書き上げた。

まるで、物語が指先から流れ出てくるようだった。


完成した異世界ミュージカルのタイトルは

「The Day We Rose」。

台本の読み合わせと、軽い歌入れ。

歌詞を全員に配り、サビはみんなで。

声が重なる。

さっきまで机の上にあった言葉が、空間に響く。

自分たちで作ったハーモニーが、ちゃんと音楽になっていた。

その瞬間、静かな感動があった。


試しに1シーン通してみる。

1回目は、まだ探り探り。

動きも間も、どこか固い。

けれど2回目、りのが言う。

「好きに動きつけてみようよ。」

そこから空気が変わった。

それぞれが自由に動き始める。

紙の上の文字だったものが、立体になっていく。

確かに“舞台”が立ち上がる感覚があった。


たった3時間。

AIを使えば、1シーンくらいすぐに作れてしまう時代。

それでも、みんなで迷い、選び、直し、声を重ねる時間には、ちゃんと心地いい疲れと達成感が残った。

「何かを一緒に作った日」だった。


通しを終えたあとは、自然と談笑の時間へ。

「これやってみたかった!」と楽器を叩き始める友人。

「昔やってたんですよ」とジャグリングを披露する人。

輪になって、ただ話している人たち。


特別なことをしているわけじゃないのに、場の空気が、やけに心地いい。

さっきまで同じ作品を作っていたからだろうか。

それぞれ別々のことをしているのに、どこか同じ場所に立っている感覚があった。


はじめましても多かった。

「仲間だ」と言葉にしたわけでもない。

それでも、いつの間にか、みんなの中にその感覚は生まれていた。

この日のラウンジは、創作と余韻が、静かに共鳴していた。

 
 

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