3月12日の物語
- 3月13日
- 読了時間: 3分
この日のラウンジは、絵と演技がゆっくり行き来する夜だった。
はるきのスケッチブックをみんなで見ていたところから始まる。
ページをめくるたびに現れる絵の上手さに、友人たちが驚く。
「すごいね。」
そんな声が上がる中、すぎちゃんが少し誇らしげに言う。
「おれ、絵上達したよ!」
それなら、と友人たちがお題を出し、はるき・すぎちゃん・れみーの3人で画力チェックが始まった。
最初のお題は「バイキンマン」。
3人ともそれぞれ違う視点で特徴を捉えた絵を描き上げる。
「3つ足して割ったらちょうどいいかも。」
友人のその一言に一度はみんな納得するが、最終的に一番人気だったのは、れみーのバイキンマンだった。
その後は似顔絵大会に。
デフォルメ調やリアル調など、それぞれの個性が光る絵が並ぶ。
ただひとつだけ問題があった。
すぎちゃんが描いたはるきの似顔絵。
なぜか、いつの間にか『進撃の巨人』に登場するエルヴィン団長になっていた。
「全然違うじゃん!」
笑いが起こりながら、
画家への道のりはまだ長そうだ、という結論になった。
ひとしきり笑ったあと、話題は演技へ。
れみーが、今月末に出演する朗読劇について話し始める。
幼女から老婆まで、さまざまな声を演じ分ける役らしい。
「どうやってキャラクターを作ればいいか悩んでて…」
そこで、はるきがひとつの練習方法を提案する。
友人たちに紙を配り、年齢・職業・性格を書いてもらう。
それをくじ引きのように引いて、即興でキャラクターを作りながら台本を演じるというものだった。
順番をじゃんけんで決め、最初はれみー。
引いた職業は、まさかの「ミッキーマウス」。
「これは闇鍋ゲームになるぞ。」
みんなで笑いながらも、れみーはセリフを読み、キャラクターを想像して演じ始める。
同じセリフでも、年齢や性格が変わるだけで空気がまったく変わる。
はるきがディレクションを入れ、すぎちゃんや友人たちが見守り、応援する。
もう一度演じてみると、さっきとは全然違う人物がそこに現れる。
次ははるき、その次はすぎちゃん。
順番に演じていくうちに、場の集中も少しずつ深まっていった。
「セリフを読み解くのって面白いよね。」
はるきがそう言うと、みんな自然と頷いていた。
それを見ていた友人がぽつりとつぶやく。
「いいな。」
普段とは違う一面を見られること。
そして、その場で新しいものが生まれていくこと。
その面白さが、ラウンジにゆっくり広がっていた。
この日は、最初は和気あいあいとした会話から始まり、それぞれの時間を楽しみながらも、どこか一つにつながっているような空気だった。
笑いと集中が行き来する、やわらかくて、少し特別な夜だった。
