3月21日の物語
- 3月22日
- 読了時間: 2分
この日のラウンジには、言葉と記憶が、ゆっくりと交差するような時間が流れていた。
先週の誕生日会。
その余韻をかたちにした動画が、ようやく完成する。
編集を終えたせいとが、「終わったー!」と満面の笑みを浮かべると、ちょうどそこにいた3月誕生日のさのちゃんと、集まっていたみんなで、お披露目が始まった。
映像の中には、あの日の笑い声や、何気ない仕草が閉じ込められている。
画面を通して見るはずなのに、その時間が、すぐそばに戻ってくるようだった。
初めてその場にいる友人も、その空気を自然と受け取って、笑顔を重ねていく。
住民や友人たちからの
「すごいね!」
の一言に、せいとはどこか満足そうに笑っていた。
ひとつの時間が、もう一度みんなの中に広がっていく。
そんな、静かな共有だった。
やがて話題は、これからの話へと移っていく。
映像、舞台、声。
それぞれ違う場所で表現している人たちが集まり、
「どんな作品に出たいか」
「どんな役者でいたいか」
そんな問いが、自然と行き交いはじめる。
誰かの理想に、誰かが頷き、誰かの言葉が、別の誰かの中に残る。
友人が語った、配信でかけられた言葉。
嬉しかった記憶が、そのまま場に置かれる。
それぞれの未来が、まだ輪郭のないまま、
でも確かにここにあると感じられる時間だった。
その流れのまま、さのちゃんが考えた「アルティメット水平思考クイズ」が始まる。
まずは、普通の水平思考クイズから。
YESかNOで答えられる質問を重ねながら、少しずつ物語の輪郭を浮かび上がらせていく。
ひとつの答えに辿り着いたとき、その意外さに、場が大きく揺れる。
そして、いよいよ“アルティメット”。
今度は、質問の答えすらコイントスに委ねられる。
偶然に導かれる答えをつなぎ合わせながら、みんなでひとつの物語を作っていく。
その果てに現れたのは、なぜか横綱白鵬の、少し悲しい過去。
どこにも存在しないはずの物語を、みんなで作り上げた一体感も相まって、その“それっぽい話”に、みんなで笑い合った。
考えて、話して、また考えて。
誰かの言葉に触れて、自分の中の何かが少し動く。
この日のラウンジは、そんなやり取りで満ちていた。
ひとつの題材を、みんなで共有しながら、同じ場所で、それぞれ違うものを感じている。
その重なりが、やわらかく空間をあたためていた。
言葉が行き交ったあとに残る、静かな余韻のようなものが、この日の終わりにも、そっと漂っていた。
