3月23日の物語
- 3月23日
- 読了時間: 2分
この日のラウンジには、言葉が少しだけ遠回りするような、軽やかな時間が流れていた。
はるき、さのちゃん、いっちー。
そこに、言葉遊びが好きな友人たちが集まる。
自然と始まったのは「カタナーシ」。
普段ならすぐに届くはずの言葉を、あえて遠回りして伝えなければいけない。
カタカナを使わずに説明するたび、言葉は少しだけ不器用になり、そのぶんだけ、想像力が必要になる。
「それっぽいのに違う」
「もう少しで分かりそうなのに」
そんなもどかしさが、あちこちでこぼれる。
正解が出た瞬間、ぱっと空気が明るくなる。
けれど同時に、次は自分が出題者だという事実に、小さなため息も混ざる。
喜びと嘆きが、同じ場所に並ぶ。
それが可笑しくて、また笑いが生まれていく。
言葉をひとつ選ぶたび、自分の中にある語彙や発想が、少しずつ試されていく時間だった。
その流れのまま、さのちゃんの「アルティメット水平思考ゲーム」が始まる。
YESかNOか。
その答えさえも、コイントスに委ねる。
偶然に任せて進んでいく物語は、少しずつ形を持ち始める。
やがて浮かび上がったのは、
「金と成り果てたおばあちゃんが、銀のおじいちゃんに誘拐された」
という、不思議な話。
どこかちぐはぐなその物語に、ラウンジは笑いで満たされる。
そして、その責任を取るように、さのちゃんがその物語をエチュードで演じることになる。
生まれたばかりの曖昧な物語が、身体を通して、少しだけ輪郭を持つ。
その過程すら、どこか愛おしくて、また笑いが重なっていく。
和やかで、あたたかい時間。
言葉がすぐに届かないからこそ、少しだけ考えて、少しだけ寄り道をする。
その遠回りが、この場所の空気を、やわらかく整えていた。
