3月30日の物語
この日のラウンジには、言葉と、その少し先にある何かを掴もうとする時間が流れていた。
最初に始まったのは、あいうえおエチュード。
セリフの頭を、必ず「あ」から「ん」までの音でつないでいく。
ただそれだけの制約なのに、思った以上に難しい。
はるくんとかりんは、言葉を探すたびに少し立ち止まり、頭の中で何かを組み替えているのが見える。
一方で、うめしゅーに鍛えられてきた友人たちは、迷いなく言葉を差し出していく。
「リセットボタンが…!」
「何か手がかりがないか探してみましょう!」
物語が、少しずつ形を持ちはじめる。
それを見て、うめしゅーがぽつりとこぼす。
「みんな、成長してるな」
その言葉は、どこか嬉しそうで、そして少し誇らし気だった。
続いて始まったのは、不謹慎王決定戦。
お題に対して、あえて不謹慎な回答を考えて、その絶妙なラインで笑いを取れるかを競う遊び。
攻めすぎてもいけない、けれど引きすぎても届かない。
そのぎりぎりを見極める中で、うめしゅーの言葉は迷いなく場を射抜いていく。
笑いと驚きが重なり、そのまま優勝が決まった。
少し張りつめた空気をほどくように始まったのが「レロレロ酒場」。
「ら・り・る・れ・ろ」だけで居酒屋のメニューを読み上げ、読み上げられたメニューを当てた人がカードを手に入れる。
そして、カードに書かれた金額の合計で勝敗が決まる。
シンプルなのに、音だけを頼りに想像するその時間が、妙に楽しい。
読み上げられる曖昧な音に、それぞれが頭の中で料理を思い浮かべる。
一瞬のひらめきでカードが取られていくたび、場の空気が軽やかに跳ねる。
かりんは「時価」を2枚取り、悔しさをにじませる。
はるくんはカードを取るたびに、少し大げさに声を上げる。
「はい〜!しめ鯖ぁ!」
その声に、また笑いが重なる。
結果は、はるくんの勝利。
「今日ははるくんの奢りということで」
冗談のようなその一言に、「ごちそうさまです」と声が続く。
まるで本当に、どこかの店を出たあとのような、少し満たされた空気が残る。
言葉に縛られ、
言葉で遊び、
言葉で笑い合う。
その一つひとつが、同じ場所でゆるやかにつながっていた。
この日のラウンジには、競い合ったあとのやさしさと、誰かと一緒にいることのあたたかさが、静かに残っていた。
