9月15日の物語
この日のラウンジは、みずきち、がくし、はるきと、遊びに来た友人たちでゆったりと始まった。
大勢で囲むような賑やかさとは少し違う。
それでも、誰かが何かを始めれば、自然とみんなの視線がそこへ集まり、気づけば笑い声が重なっている。
そんな近い距離感の夜だった。
始まりは、がくしが一昨日行われた「メロい先輩選手権」を振り返ったことから。
「そもそも、メロさとは何か」
答えを探すべく、みずきちとはるきに“一番メロい動き”を見せてもらうことになった。
みずきちは後輩らしい可愛らしさで友人たちをメロメロに。
対するはるきは、セクシーなパフォーマンスでがくしを虜にする。
二人から学んだがくしも、過去に出演した作品での動きを思い出しながら全力で挑戦。
「最高にメロい!」
賞賛を受け、ついにがくしは“メロい”を習得したらしい。
その後、みずきちの友人から「また歌って欲しい!」というリクエストが届いた。
以前聞いたはるきの歌声や、みずきちたちが歌った「イソジンの歌」が楽しかったのだという。
それならばと曲を探しながら歌い始め、「輝く未来」や「ホール・ニュー・ワールド」がラウンジに響く。
みずきちとはるきが歌えば、がくしがアドリブでボイスパーカッションを重ねる。
十月にハロウィンやヴィランをテーマにしたLIVEを控えるはるきは、「どうしたらもっと怪しく艶やかに歌えるのかなー?」と悩みながらも、その時間ごと楽しんでいるようだった。
やがて今度は、はるきが見ていたダンス動画をきっかけにダンス講座が始まる。
最近ダンスを練習しているみずきちは、はるきから一つずつ動きを教わり、まずはカウントで形にしていく。
しかし音楽に合わせれば一気にテンポは速くなり、身体が追いつかない。
さらに立ち位置を変え、はるきのお手本が目の前からなくなると、途端に不安が顔を出した。
「無理!」
そんなみずきちへ、がくしは「間違えたら俺が前に出て炭坑節踊ってやる!」と、優しいのかよく分からない言葉で応援する。
結局、動画を撮るところまでは辿り着かなかった。それでも、最初より確実に踊れるようになっていた。
歌ってみたい。踊ってみたい。知らない“メロさ”だって身につけてみたい。
誰かの「やってみたい」に、別の誰かが得意なことを少し貸してくれる。
できなかったことが、ほんの少しだけできるようになる。
その隣では、友人たちが笑って見守っている。
このラウンジで過ごした時間の中には、そんな小さな成長がいくつも隠れている。
今日できなかった続きも、きっとまたここに集まった日に始めればいい。
そんな風に思える穏やかな夜だった。
