4月10日の物語
金曜日のラウンジは、少しだけ新しい風を含んでいた。
はるが、珍しく週末にラウンジにいた。
はるの提案で、「あいうえおエチュード」が始まる。
月曜日に教わったばかりのルール。
セリフの頭文字を「あ」〜「わ」でつないで1つの演劇を完成させる。
なつはまだ掴みきれず、言葉を探して立ち止まる。
その隣で、たいがとはるは、「あ」から「わ」まで、滑らかに物語を繋いでいく。
その流れを見て、なつも少しずつ理解していく。
やがて、自分の番。
友人たちを前に、言葉を紡ぎながら、最後まで辿り着く。
ぎこちなさの奥に、確かな手応えが残っていた。
その勢いのまま始まったのは、新しく加わったボードゲーム「サンレンタンゲーム」。
誰かの“好きなものの順番”を当てる。
シンプルなはずなのに、価値観がぶつかり合うたびに、予想は揺らぐ。
「一番焼くならマシュマロでしょ!」
「いや、プロジェクターは魅力あるって!」
気づけば、人生ゲームのお金を使った賭けが始まり、実況までついて、場はちょっとしたレースのようになる。
結果は、友人たちの勝利。
なつ、たいが、はるの手元には、何も残らなかった。
それでも、不思議と悔しさよりも、笑いの方が大きかった。
最後に始まったのは、「答えを合わせましょうゲーム」。
けれど、そこに“ズラす役”が紛れ込む。
最初は全く揃わず、途中で相談の時間が設けられる。
今度は揃いすぎて、犯人が勝てなくなる。
うまくいかないバランスさえも、また次の笑いに変わっていく。
「祭りの屋台で買うものといえば?」
その問いに、たいがとはるは「たこ焼き」で揃う。
けれど、周りからは大きなブーイング。
納得いかない表情のふたりと、それを面白がる周りの声。
正解なんてひとつじゃないことを、みんながわかっているからこそのやり取りだった。
新しい人が加わり、新しい遊びが生まれていく。
その中で、少しずつ距離が縮まり、同じ場所にいる感覚が育っていく。
この日のラウンジには、始まりの軽やかさと、その場で繋がっていく確かな時間が、静かに流れていた。
