4月15日の物語
- 4月16日
- 読了時間: 2分
ラウンジには、雨の日の教室みたいな空気があった。
仲のいいグループがふたつ、ゆるやかに混ざり合いながら、それぞれに賑やかな時間を過ごしている。
つばさは、友人に頼まれてプロフィール帳を書いていた。
好きなものや性格、あれこれを赤裸々に埋めていく。
書きながら、「こういうの、改めて書くといいな」とぽつりとこぼす。
自分のことを言葉にすると、少しだけ整理されるような感覚があった。
そこから、ふとした流れで始まる。
「スキップできない人いる?」
何気ない問いに、「私スキップめっちゃ早いです」と友人が名乗り出て、なぜか競争になった。
つばさ、たいが、友人の三人。
ヨーイドンでスタートするも、すぐに声がかかる。
「今のちょっとおかしかったよね」
「もう一回やってみて」
疑われるつばさ。
やり直してみると、今度はちゃんとできている。
安堵と、少しのドヤ顔が混ざった表情に、周りから笑いが起きた。
そんな空気のまま、話題は昨日の出来事へと移る。
かりんたちがダンス動画を撮っていたこと。
「俺たちも踊りたい!」
つばさがそう言い、はるきが提案する。
「じゃあ、“盛れ!ミ・アモーレ”やってみる?」
軽くアイソレーションをしてから、振りを覚えていく。
最初はぎこちない。
でも何度か繰り返すうちに、少しずつ形になっていく。
「一緒にやろうよ!」
つばさが友人二人を誘い、ダンスが上手な友人も加わる。
教えてもらいながら、みんなで何度も繰り返す。
途中で休憩を挟みながらも、たいがは黙々と自主練を続けていた。
つばさは息を切らしながらも、
「よし!もう音で踊ろう!何回も繰り返して覚えよう!」
と声を上げる。
その様子は、どこか部活みたいだった。
何度も練習して、最後に三人で動画を撮る。
撮り終えて、確認して、少しの間。
「これは……世に出せない……」
つばさとたいががそう言って、少しだけ肩を落とす。
そのまま動画は、お蔵入りになりそうな空気だった。
はるきは、その様子を見ながら思っていた。
せっかく頑張って踊ったんだから、「俺たち頑張ったんだぜ」って、胸を張って載せればいいのに。
でも、それは口には出さなかった。
きっと、その迷いも含めて、この時間なのだと思ったから。
外は雨。
中では、誰かが笑っていて、
誰かが何かに夢中になっている。
その全部が同じ場所にあって、
どこか安心できるような一日だった。
