4月15日の物語
ラウンジには、雨の日の教室みたいな空気があった。
仲のいいグループがふたつ、ゆるやかに混ざり合いながら、それぞれに賑やかな時間を過ごしている。
つばさは、友人に頼まれてプロフィール帳を書いていた。
好きなものや性格、あれこれを赤裸々に埋めていく。
書きながら、「こういうの、改めて書くといいな」とぽつりとこぼす。
自分のことを言葉にすると、少しだけ整理されるような感覚があった。
そこから、ふとした流れで始まる。
「スキップできない人いる?」
何気ない問いに、「私スキップめっちゃ早いです」と友人が名乗り出て、なぜか競争になった。
つばさ、たいが、友人の三人。
ヨーイドンでスタートするも、すぐに声がかかる。
「今のちょっとおかしかったよね」
「もう一回やってみて」
疑われるつばさ。
やり直してみると、今度はちゃんとできている。
安堵と、少しのドヤ顔が混ざった表情に、周りから笑いが起きた。
そんな空気のまま、話題は昨日の出来事へと移る。
かりんたちがダンス動画を撮っていたこと。
「俺たちも踊りたい!」
つばさがそう言い、はるきが提案する。
「じゃあ、“盛れ!ミ・アモーレ”やってみる?」
軽くアイソレーションをしてから、振りを覚えていく。
最初はぎこちない。
でも何度か繰り返すうちに、少しずつ形になっていく。
「一緒にやろうよ!」
つばさが友人二人を誘い、ダンスが上手な友人も加わる。
教えてもらいながら、みんなで何度も繰り返す。
途中で休憩を挟みながらも、たいがは黙々と自主練を続けていた。
つばさは息を切らしながらも、
「よし!もう音で踊ろう!何回も繰り返して覚えよう!」
と声を上げる。
その様子は、どこか部活みたいだった。
何度も練習して、最後に三人で動画を撮る。
撮り終えて、確認して、少しの間。
「これは……世に出せない……」
つばさとたいががそう言って、少しだけ肩を落とす。
そのまま動画は、お蔵入りになりそうな空気だった。
はるきは、その様子を見ながら思っていた。
せっかく頑張って踊ったんだから、「俺たち頑張ったんだぜ」って、胸を張って載せればいいのに。
でも、それは口には出さなかった。
きっと、その迷いも含めて、この時間なのだと思ったから。
外は雨。
中では、誰かが笑っていて、
誰かが何かに夢中になっている。
その全部が同じ場所にあって、
どこか安心できるような一日だった。
