4月21日の物語
その日のラウンジは、穏やかな空気の中で、言葉が少しだけ遠回りしていた。
最初に広げられたのは、「エイゴダーケ」。
英語だけで日本語のお題を伝えるゲーム。
さのちゃんの出題に対して、回答側のなつは、始まるや否や勢いよく言葉を放つ。
「ケバブ!オムライス!」
間髪入れずに、さのちゃんの強めの「NO!」。
よく聞けば、お題は食べ物ではなかった。
そこからは、手探りの時間になる。
言いたいことはあるのに、英語が出てこない。
「like a〜」「near」
知っている単語をなんとかつなぎ合わせて、
少しでも近づこうとする。
伝わりきらないもどかしさと、それでも伝えようとする必死さ。
気づけば、その不完全さごと楽しんでいた。
次に、なつが取り出したかるた。
「これ、やりたい」
“アレの名前しってる?かるた”という、普段見ているのに名前を知らないものたち。
バランやクルトン。
聞いたことはあるけれど、確信は持てない。
その中で、みずきちは迷いなく札を取っていく。
さのちゃんも、どこかコアな知識で食らいつく。
「ランドルト環なんで知ってんの!?」
思わず飛び出した声に、場の空気が一段明るくなる。
結果は、16枚を取ったみずきちの圧勝。
知識と反応の速さに、自然と拍手が集まった。
最後は、みんなで絵しりとり。
順調に続いていた流れが、ひとつの絵で揺らぐ。
みずきちが描いた「おりづる」。
そこから友人が「月」。
その次にさのちゃんが続けたのは、「おりづる」を「おりがみ」と読み取り、「月」を「ルナ」と解釈したものだった。
同じ流れのはずなのに、少しずつ意味がずれていく。
一度混乱した空気の中で、「これどっち?」と確かめながら、なんとか軌道を戻していく。
遠回りしながらも、最後にはちゃんとゴールに辿り着いた。
言葉がうまく届かなかったり、同じものを見て違う意味を持たせたり。
そのすれ違いすら、笑いに変わっていく。
静かで、やわらかい一日。
でもその中で、確かに同じ時間を共有している感覚が、そっと残っていた。
