top of page

4月22日の物語

  • 4月22日
  • 読了時間: 2分

その日の始まりは、少しだけ衝動的だった。


つばさが、ぽつりと言う。

「刀、振り回したい」

どうやら、観てきた舞台の余韻らしい。


それを受けて、さのちゃんが基礎を教え始める。

手の動き、重心、振り方。


たいがもつばさも、最初はぎこちなかったが、次第にくるくると刀を回せるようになっていく。


友だちが集まりだすと、気付くと身につけた剣術がゲームに変わる。

目を閉じて、どこを斬られるかを当てる。


名付けて、

“飛天御剣流気配斬り抜刀術 壊 零式”。


もっともらしい名前とは裏腹に、勝敗を分けていたのは気配ではなかった。


つばさの心理戦。

誘導するような間や、気配の揺らし方。

気づけば、つばさが圧倒していた。


その隣で盛り上がっているのは、「ゴキブリポーカー」。


たいがが最近「カイジ」にハマっている影響で、「人生を賭けたい」と言い出したことがきっかけだった。


出したカードが本当か嘘かを見抜くゲーム。


最初は人数も多く、どこか様子見の空気があったが、

「もっと白熱したい」

その一言で、カードの種類を減らし、一対一の勝負へと変わる。

空気が一気に研ぎ澄まされる。


しかし結果は、なぜか女性陣の圧勝。

敗れた男性陣3人の中でも、たいがだけは満足げだった。


「最高に人生を賭けられた!」

その言葉と表情が、妙に印象に残る。


そして、最後に始まったのはジェスチャー。


イベントで使われたお題を、制限時間内にどこまで当てられるか。


表現する側も必死だが、それ以上に、見ている側の理解が速い。

驚くほどの速さで正解が積み重なっていく。


中でも、さのちゃん。


「橋本環奈」というお題に対して、一瞬で空気を変えた。

仕草も、間も、表情も。

その場にいた誰もが、思わず納得してしまうような再現だった。


その日は、ずっと誰かが動いていた。


刀を振り、

駆け引きをして、

身体で伝えて、


そのどれもが、少しだけ他人との距離を近づける。

気づけば、同じリズムで笑っている。


そんな一体感が、静かに、でも確かに広がっていた。

 
 

最新記事

すべて表示
5月29日の物語

雨上がりのようなやわらかい空気が、ラウンジに流れていた。 「初めましての人もいるし、もっとみんなのこと知りたいな」 りのが棚から取り出したのは、『佐藤です。好きなおにぎりの具は梅です。』というゲームだった。 お題に答え、その答えを今度はみんなで当てる。たったそれだけなのに、不思議と人柄が滲み出る。 好きなもの。苦手なもの。思いがけないこだわり。 一巡終わる頃には、「そんな一面あったんだ」と笑い声が

 
 
5月28日の物語

ラウンジに降りてきたみやびとなつとすぎちゃんは、最初に少しだけ背筋を伸ばした。 床には、たいがが置いていたチラシが散乱している。 けれど、その場には誰もいない。 普段は閉まっているラウンジのドアも少しだけ開いていた。 「……不審者?」 誰かがそう呟いた瞬間、その説が妙に有力になってしまう。 三人は護身用として、殺陣練習用の刀をそれぞれ手元に置き始めた。 友人が遊びに来る気配がすると、すぐに刀を持っ

 
 
5月26日の物語

火曜日のラウンジには、いつもの笑い声があった。 でもその奥に、少しだけ“終わり”の気配が混ざっていた。 この日、えさっしーはこのシェアハウスを旅立つ。 だからまずは、えさっしーのやりたいことを全部やろう、という話になった。 机の上には、次々とボードゲームが広がっていく。 最初に始まったのは『答えを合わせましょうゲーム』。 価値観を揃える、シンプルだけど妙に盛り上がるゲームだった。 「好きなおにぎり

 
 
bottom of page