4月23日の物語
雨の音が、少しだけ強くラウンジに届いていた。
おだやかな時間が、ゆっくりと流れている。
そんな中で始まったのは、「狩歌」。
流れてくる歌を聞きながら、歌詞に含まれるキーワードを机の上から探し取る。
誰かが歌い出すと、それに耳を澄ませる時間が生まれる。
Disneyの曲、ボーカロイド、J POP。
選ばれる歌はばらばらで、だからこそ、その人らしさがにじむ。
後半になると、キーワードを拾うだけでなく、その言葉が入っている曲を歌わなければならない。
「あれ、なんだっけ」
懐かしいのに思い出せない曲。
初めて聞くのに、どこか引っかかるメロディ。
自然と笑い合いながら、少しずつ記憶を手繰り寄せていく。
誰かの歌を、ただ聞く。
それだけで、少し新鮮な時間だった。
その流れで、昨日の続きをなぞるように「ゴキブリポーカー」が広がる。
カードを伏せて、名前を告げる。
それが本当か嘘かを見抜く。
静かな駆け引き。
やり取りを重ねるうちに、少しずつ相手の癖を探るようになる。
そして最後に残ったのは、はるきだった。
勝った、というより、崩れなかった、という感覚。
そのことに、内心でそっと息をつく。
「よかった」
声には出さない安心が、少しだけ残る。
夜が深まってきた頃、りのが持ってきた一曲が、空気を変える。
『Day dream believer』。
次に関わる作品で使うというその曲を、みんなで奏でてみることになった。
簡単な楽器を手にして、主旋律とハモリに分かれる。
聞いたことはあるのに、歌詞までは知らなかったその曲を、ひとつひとつ確かめるように歌っていく。
「こんな歌だったんだ」
誰かがそう言って、また声が重なる。
最後は、全員で。
揃っているようで、少しずつ違う声。
それでも、不思議とまとまっていく。
雨の音の向こうで、歌がやわらかく広がっていた。
この日は、そこにいた全員で、同じ時間をつくっていた。
静かで、あたたかい一日だった。
