4月24日の物語
- 4月25日
- 読了時間: 2分
この日のラウンジは、言葉が重なっていくことで、少しずつ形を変えていた。
はるの「ストーリープレイングをやってみたい」という一言から、りのが選んだのは「そういうお前はどうなんだ」。
個性豊かな登場人物になりきり、犯人をなすりつけ合うゲーム。
この日は少しクセが強くなり、配役の時点で、なぜか全員の性別が逆転する。
そこから、さらにクセは強くなる。
妖精が見える人。
無邪気に見えてマフィアの一員の人。
誰かに片想いをしている人。
はるの友人は、虚言癖という設定を与えられ、ぬいぐるみや不思議な置物に囲まれた、どこか現実から浮いた存在になっていく。
誰か一人が決めるのではなく、誰かの言葉に、別の誰かが重ねる。
その繰り返しの中で、輪郭のなかった人物たちが、少しずつ立ち上がっていく。
気づけば、犯人を探すことよりも、その世界を作ることに夢中になっていた。
偶然と即興が重なって、その場にしかない物語が生まれていた。
流れはそのまま、創作へと続く。
みずきちが、ワークショップでやったという脚本作り。
それぞれが気になる単語を10個、さらに気になる事象を2つ、理由を添えて書き出す。
集まった言葉は、70個。
そこから、各自がいくつかを選び、物語のあらすじを紡いでいく。
りのは、パチンコに負けた舞台役者が、景品のルービックキューブを極め、オーディションで勝ち上がっていく話。
はるは、りのをモデルにした人工知能搭載型ヒューマノイドが、NOPEを片手にホールへ向かう話。
みずきちは、屋外シネマに通うはるが、りのと出会い、演じる側へと歩き出す話。
同じ言葉の中から選んだはずなのに、出来上がるものはまるで違う。
その違いが、そのままその人らしさのようだった。
そして、この遊びにはまだ名前がない。
「何か名前つけたいよね」
誰かが言い、少し考えて、“ピックアップライター”という名前に落ち着く。
その名前がついた瞬間、この時間もまた、ひとつ形を持った気がした。
それぞれの友人同士も、自然と言葉を交わし、気づけば同じ輪の中にいる。
作ることと、関わることが、ゆるやかに混ざり合っていた。
その日のラウンジには、言葉から始まる物語が、静かに息づいていた。
