4月29日の物語
- 4月30日
- 読了時間: 2分
その日は、疑うことから始まった。
友人が持ってきたマーダーミステリー。
普段の関係を知っているからこそ、一つひとつの言葉に意味が乗る。
「あの人なら、ここでこういう嘘をつきそう」
推理は、どこか現実と地続きだった。
せいととたいがの読みは鋭く、核心に近づいていく。
けれど、その隙間をすり抜けるように、いっちーが動く。
キャラクターの名前が動物に由来していたことをいいことに、ひたすら「ウホウホ」と言い続ける。
議論の外側に逃げるようなそのやり方に、誰も強く踏み込めない。
気づけば、そのまま勝利していた。
隣で手を組んでいたさのちゃんは、「俺が何とかしないと…」と繰り返していたが、その言葉もまた、流れの中に溶けていった。
続いて、「エイゴダーケ」。
日本語を、英語だけで伝える。
制限の中で、言葉を探す。
けれど途中から、その限界が見え始める。
言葉が出ない。
代わりに、身体が動く。
ジェスチャーが混ざり、もはや何語なのか分からなくなる。
それだけで伝わることが、おかしかった。
さのちゃんは、高速道路を走り、サービスエリアでご飯を食べるジェスチャーをするも、さっぱり伝わるなかった。
さらに、たいがが見つけたボードゲーム。
“サイズを当てる”。
何気なく置かれていたものを、改めて測ってみる。
メジャーを使って、ラウンジの中のいろいろなものを数値にする。
その中で、さのちゃんは強かった。
自分の手の長さを基準にして、次々と当てていく。
テンポよく進む中で、ふとした発見が生まれる。
「これ、こんな大きさなんだ」
当たり前に見ていたものが、少し違って見える。
そして最後に残ったのは、「小指と耳のサイズが同じ」という話。
本当かどうかは、誰にも分からない。
けれど、その曖昧さも含めて、その場の空気にちょうどよかった。
その日、ラウンジでは、誰かが何かを無理に揃えることはなかった。
それぞれがやりたいことをやり、その様子を誰かが見て、また笑う。
関わりすぎず、離れすぎず。
そんな距離感の中で、時間がゆっくりと流れていた。
