4月5日の物語
昨日の余韻がまだ残るラウンジで、この日は片付けから始まった。
すぐに、その時間はただの作業ではなくなっていく。
チャンバラ棒を手にしたささみとたいがが、風船を叩き始めたことがきっかけだった。
「この4タイルから出ちゃダメ、風船を落とした方が負け」
けんじの一言で、遊びにルールが生まれる。
何度かラリーを重ねるうちに、ささみがふと気づく。
“一発目にスマッシュを決めれば勝てる”
そこからゲームは、どれだけ受け止められるかの勝負へと変わった。
単純で、少し理不尽で、でもなぜかやめられない。
その場にいた友だちが放った
「クソゲーって、クソだけど一番面白い」
その言葉に、誰もが少し納得していた。
その流れのまま、今度は“気配斬り”。
目を回すほどその場で回り、位置も感覚も曖昧なまま、相手を探す。
見えない中で、気配だけを頼りに動く時間は、思っていた以上に真剣で、思っていた以上に可笑しかった。
やがて遊びは、少しだけ形を変える。
「ちゃんとやってみたい」
ささみの一言で、殺陣の時間が始まった。
けんじとたいがが教え、ささみはそれを一つずつなぞっていく。
動きは少しずつ整い、その場の空気も、ほんの少しだけ引き締まり、稽古は次第に熱を帯びていく。
風にあたりながら、けんじが言う。
「ここは夢の通り道だ!」
その言葉で、また空気がほどける。
真剣でいて、柔らかさを失わないのがこの場所らしい。
最後は、その日の集大成のように、ヒーローショー風のアクション。
ささみを中心に、動きを組み立て、何度も繰り返して形にしていく。
うまくいかない瞬間も、そのたびに少しずつ揃っていく呼吸も、全部まとめてひとつの流れになっていた。
何度目かで成功すると、自然と笑い声が重なった。
片付けから始まったはずの一日。
気づけばずっと、誰かと何かをしていた。
遊びも、練習も、そのあいだにあるものも、全部が同じ場所に溶けていく。
この日のラウンジには、体を動かしたあとの、少し心地いい疲れと、同じ時間を過ごした確かな一体感が残っていた。
