4月8日の物語
春の気配が少しだけ近づいたラウンジで、その日はなぜか「試される日」になっていた。
きっかけは、つばさの一言。
「新学期という事で、入学試験やろう」
軽く始まったはずの入学試験という名の、つばさ出題クイズは、いつの間にか本格的な選抜へと変わっていく。
算数、歴史、発想力の問題が、出題される。
次々に出される問題に、いっちーとさのちゃんはあっさりと脱落する。
残ったのは、つばさの友人。
ようやく掴んだ“合格”の先に待っていたのは、「入学金800万円」という現実だった。
喜びと絶望が同時に訪れると、ラウンジはやわらかな笑いに包まれた。
程なく、つばさが急に、不思議なリズムゲームを始める。
巻き込まれるいっちーとさのちゃん。
なかなか回答はでず、テンポもどこか曖昧になる。
それでも、不思議と笑いだけは途切れない。
正解や完成よりも、その途中が面白い時間だった。
やがて話は、新学期へと繋がっていく。
「今日は、転校生が来てる」
というつばさの言葉に、嫌な予感を感じるさのちゃんといっちー。
即興で、「おもしろ転校生」を演じることに。
つばさのターゲットになったは、さのちゃん。
さのちゃん扮する、特徴的な話し方の人物が名乗ったのは、
「道標トモロヲ」。
出身地は「右」、
特技は「バッタのオスメスを見分ける」。
さのちゃんの思ってもいない言葉の数々に、ラウンジが笑いに包まれる。
やっとつばさの無茶振りから解放されたさのちゃんは、次はいっちーを巻き込む。
いっちーが演じた不思議な人物と、つばさの絶妙な返しに、笑いがどんどん大きくなっていく。
トリを務めたのはつばさ。
出身地は「東京靴流通センター」の言葉で、笑い声がさらに大きくなる。
次々に繰り出される即興とは思えないおもしろ自己紹介の数々に、言葉を発するたびに、笑いが生まれる。
誰かが笑い、誰かが乗っかり、また次の誰かが新しい何かを持ち込む。
この日のラウンジは、ひとつのことに集中するでもなく、それぞれが好きなことをしながら、同じ空間にいる時間だった。
遊ぶ人、話す人、眺める人。
それぞれの距離感のまま、でもどこか繋がっている。
秩序があるわけでも、ないわけでもない。
ただ心地よく、その場にいられる空気。
春のはじまりのような、少し軽やかな一日が、穏やかに流れていた。
