5月6日の物語
- 5月6日
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きっかけは些細なひとことだった。
「踊ってみようか」
選ばれた曲は『Dynamite』。
かりんが前に立ち、自然と先生の位置に収まる。
一つひとつの動きを丁寧に分解し、言葉と体で伝えていくその姿に、周りから感心の声が漏れる。
普段教えることをしているわけではないのに、なぜかすっと入ってくる説明だった。
さのちゃんは、あっという間に振りを吸収していく。
気づけば音にぴたりと乗り、体が迷いなく動いていた。
つばさは、まだ動きが追いつかない部分がありながらも、表情だけはどこか完成していて、そのアンバランスさが場を和ませる。
たいがは何度も同じ箇所でつまずきながらも、決して離れない。
遅れてもいいから、とにかく食らいつくように繰り返していた。
そうして迎えた、最初の通し。
完璧とは言えない。
それでも、四人の動きがふと揃う瞬間があった。
「…いいじゃん」
誰かのその一言に、少しだけ自信が混じる。
BLTと名付けられた即席のチームは、その日、初めて一つの形を持った。
最後に動画を撮ると、そこには数十分とは思えないほどの一体感が残っていた。
熱の残るまま、今度はジェスチャーの勝負が始まる。
積み重ねてきた遊びに、ひとつの決着をつけるように、トーナメントが組まれた。
笑いと悔しさが入り混じる中、頂点に立ったのはたいが。
けれど、つばさの出した「紅葉」というお題だけは、どうしても届かなかった。
その曖昧な手の動きが、逆に深く心に残る。
まだ足りないものがある。
それを、誰もが少しだけ感じていた。
やがて、空気はまた変わる。
「殺陣、教えてほしい」
かりんの言葉に応えるように、さのちゃんが動きをつけていく。
見栄えのする型を選び、短い流れを形にする。
かりんはそれをすぐに体へ落とし込み、
しなやかに、しかし力強く再現してみせた。
拍手が起こる。
その様子に触発されたつばさとたいがは、独自の動きを作り始める。
やがてそれは、技とも呼べない自由な応酬へと変わり、
最後には、見えないはずの光を撃ち合う形で終わった。
その一日を振り返ろうとすると、確かに色々なことをしていたはずなのに、輪郭はどこか曖昧だ。
ただ、体を動かし、笑い合い、同じ時間を共有していた感覚だけが、静かに残っている。
何をしたかよりも、誰と過ごしたか。
そんなことを、少しだけ思い出させるような、やわらかい余韻の一日だった。
