5月7日の物語
- 5月7日
- 読了時間: 3分
みずきちがパソコンで何かを調べていた。
その流れで開いたYouTubeから、昔ディズニーシーで流れていたハロウィンショーの音楽がふいに響き出す。
それだけで十分だった。
「あのショー好きだったな」
「あの時期のシー、空気感すごかったよね」
そこから、話は途切れることなく広がっていく。
好きだったアトラクション。
おすすめのパークフード。
何時間でも語れてしまうような記憶の断片が、次々とラウンジに浮かんだ。
その途中、はるきがぽつりと口にする。
「ぼくらがディズニーランドのキャストだったら、どこが似合うかな?」
その一言で、また空気が弾む。
みずきちは、ビッグサンダーマウンテンやジャングルクルーズみたいなウェスタンエリア。
すぎちゃんは、ホーンテッドマンションやファンタジーランド、トゥーンタウン。
「じゃあ僕は?」
はるきがそう聞いた瞬間、全員の答えが綺麗に揃った。
「カヌー!」
あまりにもきれいに揃ったので、笑いが起きる。
けれど、カヌー好きのはるきは、どこか満更でもなさそうだった。
その後、ディズニーシーで行われているティープログラムとスパイスプログラムの予約が取れなかった話から、
「じゃあ、このシェアハウスでも講座やろうよ」という流れになる。
そこから始まったのは、なぜか検定問題大会だった。
紅茶検定では、正しい淹れ方やポリフェノールの知識まで飛び出して、みずきちは得意げに問題を読み上げていく。
結果、四問中三問正解したはるきが“紅茶マスター”になった。
対照的に、すぎちゃんは綺麗に全問外していて、その潔さに逆に場が湧いた。
続くスパイス&ハーブ検定では、みずきちと友人が四問正解で同率トップ。
「意外と普段食べてるもののこと知らないよね」と、みんなで新しい知識を面白がっていた。
そして夜の終わり。
みずきちのアイドル活動の話題から、「ハモりの練習もしよう!」と、すぎちゃんが言い出す。
選ばれた曲は、まさかのイソジンのCMソング。
メインをはるき。
上ハモをみずきち。
下ハモをすぎちゃん。
最初は笑いながら始まったのに、音を重ねるうちに、少しずつ本気になっていく。
みずきちは普段あまりハモりをやらないと言いながら、すぐに音を掴んでいた。
何度も撮り直して、微調整して、
「今ちょっと良かった!」
「もう一回!」
そんな声が繰り返される。
時計が21:59を指した頃。
最後のテイクで、三人の声が綺麗に重なった。
「できたー!」
その瞬間、見守っていた友人たちから自然と拍手が起きる。
今日一日、たくさん笑って、語って、歌った。
きっと特別なことをしたわけではない。
でも、好きなものを好きだと言い合える時間は、それだけで十分にあたたかかった。
