6月12日の物語
ラウンジには、どこか懐かしい空気が流れていた。
少し前に完成した脚本リレーWEEKの作品を、まだ読んでいなかったささみと友人たちが読んでみたいと言い出したことから、その日の朗読会は始まった。
配役を決めて読み進めるうちに、物語の中に散りばめられた伏線や登場人物たちの思惑が少しずつ姿を現していく。
読み終えたあとには、
「つまりこの人って、こういうこと?」
「あの場面ってそういう意味だったの?」
と考察が飛び交った。
すると脚本を書いた側から、
「いや、そこはそうなるつもりじゃなかったんだよね」
という声も上がる。
作り手の意図と、読む人の解釈。
その違いさえ面白くて、みんな何度もページをめくりながら笑い合った。
脚本WEEKを知らなかった友人たちも興味津々で、次は参加してみたいという声が自然と生まれていた。
物語の余韻が残る中、りのが次に取り出したのは『インサイダー』だった。
せいとは初挑戦だったため、友人たちから説明を受ける。
ルールを理解した途端、その表情はどこか頼もしくなった。
一方のささみは最初から自信満々で準備を進める。
質問を重ねながら正体を探るゲームの中で、それぞれの個性が不思議と表れていた。
りのがインサイダーになった回では、お題そのものをあまり理解していなかったことが幸いし、誰からも疑われない。
「それはキャラ得だよね」
そんな声にみんなが笑った。
ささみは逆に、疑われないよう慎重に立ち回るものの、せいとや友人たちの鋭い推理に見抜かれてしまう。
そして、せいとがインサイダーになった時。
誰にも怪しまれず、まるで最初から普通の村人だったかのように溶け込んでいた。
最後のゲームでも疑いの矛先は別の人へ向かい、せいとは静かに勝利を手にする。
その誇らしそうな表情に、ラウンジは再び笑いに包まれた。
朗読のあとも、恋愛の話をしたり、男女で違う価値観について語ったり、舞台のあらすじを読んでは結末を想像したり。
話題は絶えず、誰かの言葉がまた新しい話を連れてくる。
気心が知れた友人たちが多かったからだろうか。
笑い話の隣に少し真面目な話が並んでも、そこには安心して耳を傾けられる空気があった。
話しているだけでほっとする。
そんな空気が包んでいた。
物語を読んで、ゲームで騙し合って、それでも最後には笑い合う。
六月の夜は静かに更けていったが、ラウンジには小さな灯りのような温かさが最後まで残っていた。
