6月1日の物語
月が変わった最初の夜。ラウンジにはたくさんの友人たちが集まり、あちらこちらで違うゲームの輪ができていた。
ある場所ではオセロ盤を囲み、また別の場所では動物のブロックをそっと積み上げる。自己紹介をしながら遊ぶゲームの卓では、初めまして同士が少しずつ距離を縮めていた。
いっちーも、せいとも、さのちゃんも、その時々で違う卓に顔を出しながら賑やかな時間を楽しんでいた。
特に盛り上がったのはオセロだった。
誰もが「これはもう無理だろう」と思っていた終盤。盤面の隅から少しずつ流れが変わり、気づけば大逆転。
石がひっくり返るたびに歓声が大きくなり、勝負が決まった瞬間には思わず黄色い声まで飛び出した。
勝った本人よりも周りの方が興奮しているような、そんな微笑ましい空気だった。
ひとしきり遊んだあと、いっちーがふと思い出したように言った。
「ミヤザワさん描こうよ」
さのちゃんが生み出したマスコットキャラクター、“ミヤザワさん”。
誰が一番上手に描けるかという、ゆるやかな勝負が始まった。
せいとは完成していく絵を見て回りながら笑い続けている。
いっちーは記憶を頼りにできるだけ忠実に再現しようとしていた。
一方のさのちゃんは、自分で生み出したはずなのに原型にこだわらない。むしろ毎回違う方向へ進化していく。
「それ本当にミヤザワさん?」
そんな声が上がるたびに笑いが広がった。
友人たちも次々と参加し、気づけば十二人分のミヤザワさんが並んでいた。
どれも同じキャラクターのはずなのに、ひとつとして同じ顔はない。
眺めているうちに、「これもう一年分集めたらカレンダー作れるんじゃない?」という話になった。
誰かが描いた少し不格好なミヤザワさんを見て、また誰かが笑う。
その笑いにつられて周りも笑う。
そんな連鎖が、夜のラウンジをやさしく満たしていた。
勝負をしていたはずなのに、気づけば誰も勝ち負けを気にしていない。
それぞれが好きなことをして、それぞれの場所で楽しんでいる。
けれど不思議と空間はひとつにつながっていて、どこを見ても誰かの笑顔があった。
六月の始まりは、そんな穏やかな賑わいの中で静かに更けていった。
