6月20日の物語
雨音が窓の向こうで静かに鳴っていた。
そんな午後、りのの「お絵描き伝言ゲームやろうよ」という一言から、この日のラウンジはひとつの想像力で繋がっていった。
最初のお題は、たまごっちのまめっち。
けれど答えを知っているのは出題者だけだ。
「上に長い黒い帽子みたいな耳!」
「目は大きくて右を見てる!」
りのの説明に、みんなは首を傾げながらペンを走らせる。
言葉だけを頼りに描かれた線は少しずつ形になり、その途中でれみーだけが何かに気づいたように笑った。
正解が発表された瞬間、それぞれの紙に生まれた“まめっちたち”に歓声が上がる。
同じ説明を聞いていたはずなのに、どの絵も少しずつ違っていた。
次はれみーが出題者になる。
お題はハチワレ。
「どんな顔だったっけ?」
そんな声があちこちから聞こえる中、優しい説明に導かれるように、紙の上には様々な猫が生まれていく。
はるきのつば九郎も、友人考案の“妖怪飴渡ババア”も、みんなの頭の中を旅しながら姿を変えた。
完成した絵を並べると、それは答え合わせというより、それぞれの想像力の展示会だった。
初めて遊びに来てくれた友人がぽつりと言う。
「同じものを想像しながら描くのって楽しいね」
その言葉に、みんなが静かに頷いていた。
絵を描きながら始まった雑談は、いつしか食べ物の話へ変わっていく。
アイスの話。
期間限定のお菓子の話。
そして誰かが口にした「もっちゅりん」。
食べたことのある人、まだ食べていない人。
話をしているうちに、その名前だけでお腹が空いてくる。
さらに話題は餃子ドックへ飛び火した。
食べたい。
でも雨が降っている。
行こうか。
やめようか。
そんな小さな葛藤をみんなで共有している時間さえ、どこか楽しかった。
その時だった。
新しくやってきた友人の手に、見覚えのある箱があった。
「もっちゅりんだ!」
誰かが叫ぶ。
まるで物語の伏線が回収されたみたいな瞬間だった。
応援を背中に受けて買い物へ向かったれみーは、帰ってくる頃には笑顔になっていた。
箱の中には念願のもっちゅりん。
そして餃子ドックまで。
雨の中を少しだけ冒険して持ち帰ったご褒美だった。
みんなで味を確かめながら笑う。
写真を撮る人。
感想を言い合う人。
黙って頬張る人。
そのどれもが幸せそうだった。
やがて絵も描き終わり、お菓子も食べ終わる。
ラウンジには、何かをするわけでもない穏やかな時間が訪れた。
好きな役者の話。
趣味の話。
最近夢中になっているものの話。
誰かの「好き」が誰かの興味になる。
そんな会話が静かに広がっていく。
特別な出来事がなくてもいい。
ただ同じ場所で、それぞれが好きなものを話しているだけで嬉しくなる。
雨の降る六月の夜。
ラウンジには笑い声と甘い余韻が残り続けていた。
何気ない時間こそが、あとから思い出になるのかもしれない。
そんなことを、ふと感じた一日だった。
