6月21日の物語
この日のラウンジには、軽やかな足音が響いていた。
きっかけは、くぼりおがオーディションでダンスをした話だった。
「タップダンス習ってみたいんだ〜」
れみーの何気ない一言に、くぼりおはすぐに笑顔で応える。
「やろうよ!」
その言葉だけで、小さな教室が始まった。
まずは基本のステップから。
一、二、三、四。
リズムに合わせて足を動かしてみる。
けれど頭で分かっていても、身体はなかなか思うようには動かない。
力が入りすぎてしまうけんじとれみーは、何度も足元を見つめながら悪戦苦闘していた。
それでも、くぼりおがひとつ助言をすると不思議なほど動きやすくなる。
「なるほど!」
そんな声が上がったのも束の間。
「じゃあテンポアップしてみよう♪」
軽やかな提案とともに難易度は一気に跳ね上がった。
慌てる足。
つられて崩れるリズム。
そして笑い声。
見本を見せるくぼりおの足元は美しかった。
スニーカーなのに、音が揃う。
速いのに乱れない。
まるで床と会話をしているようだった。
その姿に感嘆しながら、みんなもまた足を鳴らす。
上手くいかないことさえ楽しい時間だった。
やがて話題はアクションへ移る。
次の舞台で殺陣に挑戦するせいとのために、今度はけんじが先生になった。
刀を持つ腕の向き。
身体の開き方。
殴られた時の反応。
ひとつひとつ丁寧に確認していく。
れみーとくぼりおも横で同じように動きを真似しながら見守っていた。
「あれ?!これはどうやるんすか?」
問いかけに返ってくるのは、独特な説明だ。
「パンやって、ドーンして、パッパッ!」
言葉だけ聞けば何も分からない。
けれど不思議なことに、みんな何となく理解している。
実際に動いてみせると、さらに分かる。
アクションの世界には、言葉にならない感覚がたくさんあるのだろう。
誰かが失敗して笑いが起きる。
成功すると拍手が起きる。
そんなやり取りを何度も繰り返しながら、少しずつ身体が覚えていく。
タップダンスも殺陣も、本当は簡単ではない。
けれど、この場所では上手くできるかどうかよりも、一緒に挑戦することの方が大切だった。
気づけばみんな額に汗を浮かべている。
それでも表情は明るい。
新しいことを学ぶ喜びと、仲間の成長を見守る楽しさが、その場に満ちていた。
役者としてできることを増やしたい。
もっと面白い表現を身につけたい。
そんな思いを口にしながら、みんなはまた次の挑戦を探している。
ラウンジに残る足音の余韻と笑い声。
そのどちらも、未来へ向かう小さな練習曲のように聞こえた。
