6月22日の物語
友人たちが少しずつ集まり始める頃、この日は完成した脚本リレーの話題から夜が始まった。
「大変なことになっているらしいよ」
誰かのそんな言葉に引き寄せられるように、みんなで台本を開く。
月曜日から木曜日まで、毎日違う人たちがバトンを繋いで書き上げた物語。
それを今度は、一人ひとりが声にして辿っていくことになった。
ちょうどその場にいた、うめしゅーの友人のバイオリニストが即興で演奏をつけてくれる事になった。
静かに鳴り始めた弦の音に包まれながら、朗読が始まった。
物語が穏やかな場面では柔らかく。
緊張感が高まる場面では鋭く。
音楽が呼吸をするように変化し、その上を言葉が流れていく。
うめしゅーとせいとは、丁寧に台詞を紡いだあと、場面転換の合間で
「気持ち良すぎる!」
と、盛り上がった。
そして例の“転”がやってくる。
あまりにも自由奔放に膨らんだあの部分だ。
音楽も勢いを増し、くぼりおはその熱量に乗るように一気に読み切った。
読み終えた瞬間、ラウンジには大きな拍手が広がる。
その余韻の中で誰かが言った。
「くぼりお、落語似合いそう。」
そう言われてみれば、どこか威勢が良く、人を引き込む語り口がある。
うめしゅーが有名な噺のさわりを教えると、くぼりおは興味深そうに耳を傾けていた。
新しい扉が、少しだけ開いたような夜だった。
朗読が終わる頃には時刻は20時を回っていた。
そこからはゲームの時間。
『はぁと言うゲーム』では、同じ一言でも感情や状況を変えて演じる。
役者としては負けられない戦いだった。
自信満々だったせいとは、思わぬミスで誰にも意図が伝わらず本気で悔しがる。
一方で、くぼりおは次々と正解され、子どものような笑顔ではしゃいでいた。
その隣では、うめしゅーたちが『不謹慎王』を広げている。
出されるお題に対し、「それは言っちゃだめだろう」と思わずツッコミたくなるような回答を考えるゲームだ。
もちろん本気で誰かを傷つけるのではなく、不謹慎さのギリギリを笑いに変えて遊ぶ。
だからこそ、答えが出るたびに
「嫌だー!」
「やばい!」
という声と笑い声が同時に飛び交う。
あるお題に対して
「お父さんの稼ぎが少ないからよ」
という回答が出ると、その鋭さが大きな笑いに変わった。
夜が深まるにつれ、話題は芝居へ移っていく。
くぼりおが抱えていた演技の悩み。
そこから始まった勉強会は、いつの間にか即興芝居になり、新しい訓練法づくりになっていた。
改善案の1つとして生まれた新しい遊び。
ボードゲーム棚の配置を覚え、目を閉じている間に変えられた場所を当てる。
芝居に必要な空間把握能力を鍛えるためのものだった。
けれど始まれば全員が本気になる。
「そこ変わったでしょ!」
「違う!」
真剣な声と笑い声が交互に響く。
気づけば時計の針は22時に近づいていた。
バイオリンの音色から始まり、ゲームをして、学んで、笑って。
たった三時間のはずなのに、いくつもの出来事が流れていった。
誰かの悩みが学びになり、誰かの特技が新しい可能性になる。
そんな夜だった。
ラウンジを出る頃には、みんな少しだけ新しい自分を持ち帰っていた。
