6月26日の物語
雨の匂いをまとった友人たちがラウンジへ集まり、それぞれの近況を話しながら穏やかな夜が始まった。
その日、一人の友人が大切そうに一眼レフカメラを抱えてやって来る。
「雨の中、持ってきたの?」
驚く声に、その友人は少し照れくさそうに笑った。
せっかくだから写真を撮ろうという話になり、はるくん、みずきち、れみーは、それぞれお気に入りのボードゲームを手にカメラの前へ立つ。
「いいね!」
「そのまま!」
「かわいい!」
優しい掛け声が飛ぶたびに、最初は少しぎこちなかった笑顔が、少しずつ自然なものへ変わっていく。
写真を撮る人も、撮られる人も、そこにいる全員が一緒になって一枚を作っているようだった。
撮影がひと段落すると、れみーが思いついた様子で手を挙げた。
「ギターが弾けそうな写真、撮ってほしいの。」
ギター経験のある友人が指の形を教え、みずきちとはるくんが「その角度いいかも」「ジャケット写真っぽくしゃがんでみよう」と次々にアイデアを出していく。
出来上がった写真を見ながら、友人は望遠レンズだからこそ生まれる空気感や、一枚の写真に込められる物語を話してくれた。
その言葉を聞きながら、みんなで写真の面白さを改めて味わっていた。
その頃、別の輪では、はるくんが最近夢中になっているカードゲームの話を熱心に語っていた。
「ユニオンアリーナっていうカードゲームなんだけどね。」
好きな作品同士でデッキを組み、作品の垣根を越えて戦える面白さを身振り手振りを交えながら説明する。
まだ遊んでいる人は少ないと思っていた。
ところが、友人の二人が「実はデッキ持ってるよ」と答えた瞬間、はるくんの表情がぱっと明るくなる。
「じゃあ今度持ってくる!」
その約束だけで、次に会う楽しみがひとつ増えたようだった。
再びみんなが集まると、先ほど撮った写真を眺めながら、みずきちが目を輝かせる。
「これで架空の演劇ポスターを作りたい。」
選ばれたのは、れみーがギターを抱えた一枚だった。
タイトルは、『もしも、ギターが弾けたなら』。
背景を整え、人物を切り抜き、文字を重ね、ギターの弦をデザインのアクセントにしていく。
画面の中で、一枚の写真が少しずつ物語へと姿を変えていった。
完成した作品を見せると、「おおー!」とラウンジに歓声が広がる。
遊びだからこそ、本気で作る。
監督ははるくん、演出はみずきち、主演はれみー。
撮影をしてくれた友人たちも、衣装や広報という役職でクレジットに名前を並べた。
もちろん実在しない舞台だ。
それでも、そのポスターを眺めていると、本当に幕が上がる日が来るのではないかと思えてしまう。
誰かがぽつりと、
「いつか本当にみんなで舞台を作れたらいいね。」
と呟く。
その言葉に、誰も「無理だ」とは言わなかった。
写真を撮る人がいて、演じる人がいて、それを応援する人がいる。
そんな時間を何度も重ねてきたこの場所なら、その夢もきっと少しずつ形になっていくのだろう。
雨は降り続いていたけれど、ラウンジの中には、次の景色を楽しみにする人たちの笑顔が、あたたかく灯っていた。
