6月8日の物語
週末の熱気が少し落ち着いた月曜日のラウンジには、ゆったりとした時間が流れていた。
この日の話題の中心にあったのは、うめしゅーが出演していた人狼を題材にした舞台だった。
実際に観劇したせいとや友人たちは、「あの時どう思った?」「人狼誰だと思ってた?」と興奮気味に語り始める。
あの場面の伏線。
あの人物の表情。
最後に明かされた真実。
感想を言い合うたび、舞台はもう一度その場に立ち上がってくるようだった。
りのは観に行けなかった分、少し羨ましそうにその輪を眺めていた。
けれど誰かが話すたび、まるでその場にいたかのように想像を膨らませている様子で、「次は絶対観たいな」と笑っていた。
舞台の余韻は、そのままゲームへと姿を変える。
「じゃあ人狼やろうよ」
誰かの一言で始まったのは、ドラゴンクエスト人狼だった。
普通の人狼とは少し違う。
疑われたからといってすぐに退場するわけではなく、運も絡む。
だからこそ最後まで何が起こるかわからない。
疑いの目を向けられながら生き延びる者もいれば、潔白なのに追い詰められる者もいる。
二回続けて魔物役を引いてしまった友人は、緊張のあまり本当にお腹が痛くなっていた。
一方で、なぜか毎回のように最初の夜で倒れてしまう友人もいて、その不運ぶりにみんなが苦笑していた。
うめしゅーは舞台の感想戦でも見せていた観察眼を、そのままゲームの中でも発揮していた。
誰が怪しいか。
どの発言が不自然か。
鋭く見抜いていく。
けれど、見抜きすぎる者は長生きできない。
魔物たちに真っ先に狙われてしまい、周囲から笑いが漏れた。
魔物になると水を飲む量が増える。
本人は隠しているつもりなのに、なぜか毎回そうなる。
せいとは逆に、普段から発言が多い。
だから正しいことを言っていても疑われる。
「しゃべりすぎなんだよ」
そんなツッコミが飛ぶたび、本人も苦笑いしていた。
魔王はなかなか見つからない。
信じた相手に裏切られることもある。
疑った相手が本当に仲間だったりもする。
それでも誰かが騙され、誰かが見抜き、そのたびに笑いが起こる。
舞台の中の人狼も面白かったけれど、目の前にいる人たちの人狼もまた面白い。
ゲームが進むほど、その人らしさが少しずつ滲み出てくるからだ。
気づけば時計は思ったより進んでいた。
穏やかに始まったはずの夜は、いつの間にか全員がゲームに夢中になっていた。
疑い合っていたはずなのに、最後に残るのは笑顔ばかり。
そんな人狼の夜が、静かに幕を閉じた。
