7月18日の物語
土曜日のラウンジは、すぎちゃんの誕生日を囲むように、笑顔が少しずつ集まってきた。
最初に取りかかったのは、「みやざわトーテムポール」の制作。
いっちーとさのちゃんが生み出した、シェアハウスの非公認マスコット「みやざわさん」を積み重ねた作品も、いよいよ完成間近。
あと五体というところまで来ていたため、すぎちゃんといっちーは黙々と筆を進めていく。
突然始まった創作に周りは少し戸惑いながらも、少しずつ増えていくみやざわさんを見ているうちに、「あと少しだね」と自然と完成を楽しみにする空気が広がっていた。
作品も、人も、少しずつ育っていく時間だった。
ひと息ついた頃、せいとが「今日は、みんながすぎちゃんにやってほしいことをやろう!」と提案する。
歌やダンスかと思いきや、集まったリクエストは一発芸や替え歌ばかり。
普段はあまりお笑いをしないすぎちゃんも、「おめめとう」や「新宝島」などに挑戦し、そのたびにラウンジには笑い声が響く。
無茶ぶりを楽しみながら次々とアイデアを生み出す仲間たちに、笑顔が途切れることはなかった。
一人のアイディアが、その場にいる全員の笑顔へと変わっていく様子は、この場所らしい景色だった。
そして最後のリクエストは、「みんなからすぎちゃんが褒めちぎられる」というもの。
住民や友人たちが書いた褒め言葉の紙を、集めてシャッフルして、一枚ずつ読み上げていく。
照れくさそうに笑いながらも、一つひとつの言葉を受け取るすぎちゃんの表情は、とても穏やかだった。
言葉にすると、気持ちはちゃんと届くのだと、みんなが改めて感じた時間だった。
その後は、ハンディファンを使った即席スポーツ大会へ。
風船を風だけで相手のコートへ運ぶ、不思議なテニスのようなゲームだったが、勝敗を分けたのは技術よりもハンディファンの充電残量と風力。
「そのハンディファン強すぎる!」
思わぬところで性能差が勝負を決め、みんなで大笑いした。
さらに、せいとが密かに広めているペットボトルキャップ野球も始まる。
最初は苦戦していたすぎちゃんも、何度か投げるうちにコツを掴み、「うまい!」「すごい!」と歓声が飛ぶほどに上達していった。
「これはチーム作れるんじゃない?」
そんな冗談まで飛び出し、せいとは嬉しそうに仲間を増やす計画を立てていた。
誕生日だからと特別なことをしたわけではない。
それでも、一緒に笑って、挑戦して、言葉を交わした一日が、きっと何より温かな贈り物になっていた。
