7月2日の物語
ラウンジでは、誰かの「ちょっと相談したいんだけど」が、その日の始まりになることがある。
この日も、ささみが肌荒れの悩みを打ち明けると、美容に詳しいはるきが自然と話を引き継いだ。
最近はスキンケアもChatGPTに相談しているらしい。
「私も!」
思わぬ共通点に笑い合いながら、ささみは自分の相棒を、はるきは「はるき'sちゃぴ」と呼ばれる相棒を開く。持っているスキンケア用品を一つずつ並べ、「どの順番が一番いい?」と尋ねてみると、二人のAIの答えは驚くほど一致していた。
「同じこと言ってる!」
その一言だけで、肌も少しだけ明るくなった気がする。
正解を見つけた安心感は、不思議と人まで笑顔にしてくれるものだった。
話題はそのまま創作へと移る。
れみーが「ともだち'n-chiのテーマソングを作りたいんだ」と話すと、ささみは最近ChatGPTと一緒に歌詞を書いていることを教えてくれた。
「じゃあ、みんなで作ってみよう。」
どんな景色が似合うだろう。
どんな言葉なら、初めて来る人にも伝わるだろう。
既存の曲を思い浮かべながら意見を重ね、「にぎやかな曲は住民紹介に合いそうだね」と話していると、ささみがメモに「YY」と書いた。
「ワイワイって読むの?」
「うん。でも“イヤイヤ”とも読める。」
その響きがなんだか可笑しくて、みんなで笑う。
「じゃあカップリング曲のタイトルは『YY(ワイワイ、イヤイヤ)』だね。」
誰かの一言で、その場に小さな拍手が広がる。
まだ存在しない曲なのに、もう名前だけは愛され始めていた。
歌詞は少しずつ形になり、今度はAIでデモ音源を作ってみることになった。
最初に流れたのは、思っていたよりもアイドルらしい一曲。
「可愛いけど、ちょっと違うかも。」
そこで今度は、ノスタルジーや優しさを英語で丁寧に伝えてみる。
再び流れ始めた音に、自然と顔が上がった。
「これだ。」
夕暮れを歩くような、どこか懐かしい空気。
まだ完成ではない。それでも、みんなが思い描いていた景色が少しだけ音になっていた。
「また聴かせてね。」
帰り際にかけられたその言葉に、れみーは照れくさそうに笑って頷く。
美容の話も、音楽の話も、途中でつまんだお菓子の話も。
誰かの「好き」や「やってみたい」が少しずつ重なり、一つの作品へと育っていく。
この日生まれたのは、一曲のデモだけではない。
いつか誰かの心に残る歌と、その隣で笑いながら名前を付けた、かけがえのないひとつの思い出だった。
